インフレもたらしたサプライチェーン混乱は、ピークを超えた?(1/4 ページ)

» 2021年12月10日 07時00分 公開
[斎藤健二ITmedia]

 原油高などに伴う値上げが国内でもニュースになっているが、世界でインフレといえば最も注目されるのが米国のインフレだ。11月10日に発表された10月米消費者物価指数(CPI)は前年同月比で6.2%と加速。エネルギーや食品を除いたコアCPIでも4.6%と上昇し、米国のインフレは加速している。

 米国のインフレは遠い他国の話ではない。米国は世界最大の消費国であり、日本にとっても最大の輸出先だ。またインフレの状況によって米中央銀行にあたるFRBの政策が決まり、それは世界の経済に影響を与える。

 インフレ加速は世界のエコノミストにとっても想定外だったようだ。三井住友DSアセットマネジメントの吉川雅幸チーフマクロストラテジストは、「みんなこんなにインフレが加速するとは思っていなかった。供給のボトルネックは想定外」と振り返る。

三井住友DSアセットマネジメントの吉川雅幸チーフマクロストラテジスト

今回のインフレは、珍しい供給不足インフレ

 インフレには原因によっていくつかの種類がある。景気が強く需要が大きくなることで起こるデマンドプル型インフレは、一般に良いインフレだと言われる。逆に、原材料高などを原因としたコストプッシュ型インフレは、悪いインフレの典型だ。インフレ期待が重なると、労働者は賃上げを求め、それに伴って企業は製品を値上げするというスパイラルに入るからだ。景気がよいわけではないので、スタグフレーションに入ってしまう危険がある。

 しかし、吉川氏は「今回のインフレは珍しい供給不足インフレだ」と話す。これは供給される数量が絞られたことで価格が上昇する形のインフレだ。

 コロナ禍が東南アジア諸国でまん延し、工場などが止まったことで、必要とされる部品が入ってこず、生産が遅れた。自動車などが典型的だが、ジャストインタイム方式が進み在庫を持たなくなった製造業では、グローバルなサプライチェーンの問題に弱い。

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