簡単には解消の目処が立たないのは、中央銀行のバランスシートだけではない。金融緩和と併せて行われた失業保険などの給付金は、大きな額が預金として滞留している。米市場全体に供給されている通貨の量(M2)を見ると、トレンドでは16.4兆ドルなのに対し、実績は21兆ドルと大きく上振れたままだ。
こうしたマネーは、経済正常化に伴いリベンジ消費などで消費に回ることも期待されたが、「意外に消費に回ってこない」(吉川氏)状況にある。
給付金などで大量に供給されたマネーは、M2を大きく押し上げた
実はこのマネーが、現在の株高を支えている。家計が保有するマネーの内訳を見ると、「預金のほかにETFが伸びている。ETF供給が増えていて、それを家計が買っている」(吉川氏)状況だ。さらに、株価が下がったときにはこのマネーが買いに入り、金利が上がったときには債券の買いに入るなど、景気の底支えの役割を果たしている。
今後、このように滞留しているマネーがどう動くかには期待もある。家計のマネーが消費に回ってくれば、景気はもっと上向くかもしれない。また米国とは違い、日欧では給付金マネーの半分は家計ではなく企業に入った。企業がこれを使えば、さらに景気は後押しされる。
「現在供給不足ということは、企業からすると投資したい環境だ。22年後半以降、経済が強くなるとしたら、上振れの可能性はそこにある」(吉川氏)
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昨今インフレが話題だ。米国ではインフレ率が急上昇し、国内でも原油高資源高の影響やガソリンや日常食品などで値上げが続いている。コロナ禍からの経済回復がまだ完全ではないなか、インフレが襲うと、不況下で物価上昇が起きる「スタグフレーション」の声さえ聞かれる。
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コロナ禍の拡大は続いているが、株式市場は好調を維持している。この背景には何があるのか。「貨幣からの逃避を垣間見た、それが今年のマーケットだった」。そう話すのは、フィデリティ投信のマクロストラテジスト重見吉徳氏だ。
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製造業の急回復で銅などのコモディティ価格が上昇し始め、米国経済が正常化すれば労働力不足となり、インフレが起こりやすくなるのでは、といったことが心配されている。しかし、これらは株価下落をもたらすとは思えない。“経済回復・正常化”→モノの価格・賃金の上昇→インフレ懸念・金利上昇→“経済悪化・株価下落”という因果は、経済回復・正常化→経済悪化・株価下落であり、矛盾しているからだ。
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昨今、原油価格の高騰などから、景気後退とインフレ(物価上昇)が同時に起こるスタグフレーションを警戒する声が聞かれる。1970年代のオイルショックの際には、景気後退で給料が上がらないにもかかわらず物価が上昇し、生活者にとって極めて厳しい状況となった。
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エジンバラやロンドン拠点の株式・債券のファンドマネジャーから、これから5年程度の中長期で投資環境を考えるときには「世界的なインフレの可能性」を想定した方が良い、という話題が出された。後になって振り返ってみると転換点になっているかもしれない、ということだ。
- 理由は半導体だけではない 自動車メーカー軒並み減産と大恐慌のリスク
7月から9月にかけて、各社とも工場の操業を停止せざるを得ないほどの減産を強いられた。この問題、本当に理由が中々報道されていないように思う。メディアの多くでは「半導体」が減産の原因だとされてきた。実際のところ、半導体そのものも理由の一部ではあるのだが、あくまでも一部でしかない。生産に大ブレーキをかけたのはもっとごく普通の部品である。
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