インフレもたらしたサプライチェーン混乱は、ピークを超えた?(2/4 ページ)

» 2021年12月10日 07時00分 公開
[斎藤健二ITmedia]

サプライチェーンのボトルネックは、ピークを超えた

 ただし、サプライチェーンの混乱は、想定外だった一方で解決の目処もつきやすい。この夏、生産活動が大きく落ち込んだ東南アジア諸国だが、秋に入って状況は大きく改善してきている。「タイ、ベトナムのPMI(購買担当者景気指数)を見ると、生産も復活してきているし遅延も解消してきている。現地の情報を見ると、感染拡大にも適応し始めている。夏場に見られた供給不足は、そこがピークだったのではないか」(吉川氏)

コロナ禍によるタイやベトナムの生産活動は、夏に大きく落ち込んだが回復を始めている

 では、1バレル80ドルを超え、7年ぶりの高値となった原油はどうか。実は、原油の需給の推移を見ると、需要も供給もコロナ禍前の値にはまだ戻っていない。つまり、原油に関しては、需要が増えすぎというよりも政治的な要因で高騰したと吉川氏は見る。

 では、米国のインフレ構造を分解してみよう。コアCPIのうち、自動車などの財とサービスに分けて見ると、インフレ率が急加速したのは財のほうだ。サービスについてはインフレ率は安定している。「モノの値段が上がっている。そのうち、4分の3くらいが自動車。それにエネルギーが加わっている。それが米国インフレの背景だ」(吉川氏)

米国のコア消費者物価(CPI)を押し上げたのは財、特に自動車価格の高騰だ

 つまり、原油価格はともかく、サプライチェーンの混乱が収まれば、自動車の生産は復調しインフレは沈静化する。インフレ期待をみても、1年先は5%程度と高止まりしているが、5年先は3%程度となっており、加速する気配はない。「2022年は、部品供給、半導体供給の問題が徐々に緩和してくる。年後半に入れば、前年比効果がはく落してインフレ率は下がってくる」(吉川氏)

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