たとえインフレ率上昇が一時的だとしても、難しいかじ取りを迫られるのが中央銀行、特に米FRBだ。
コロナ禍で世界各国はできる限りの金融緩和を行い、利下げと共に中央銀行が資産を買い入れる量的緩和(QE)を行った。それにより、ロックダウンに備えたり、ワクチン接種など対策を打つまでの時間を稼いだりしてきたわけだが、経済活動再開の目処がついてきた今は、緩和状況をどう戻していくかの時期に来ている。
前回、リーマンショックの際に行った金融緩和からの正常化の流れはこうだだった。まず資産買い入れペースを減速するテーパリングを実施する。続いて政策金利の利上げを行い、2年ほど待ってから資産買い入れで膨らんだバランスシートの縮小(QT)に入る。これが従来の公式だ。
現在、米FRBはテーパリングを始めている。さらにパウエル議長は11月30日の議会証言でインフレ警戒的なコメントを出した。「テーパリング加速はほぼ確実。3月中旬には買い入れを終わらせる方向に変えるだろう。テーパリングが終われば利上げができる。利上げの自由度が増すからだ」と、吉川氏は解説する。
問題はQE解消後に、いつどのくらいのペースで利上げを行うかだ。インフレが収まってくるなら、利上げを急ぐ必要はない。あまりに性急な利上げは経済の回復に水を差す。一方で、インフレが進むなら利上げは必須だ。「物価が上がっているのに金利を上げないと、実質金利が下がってしまい、実質的に緩和が大きくなってしまう」(吉川氏)からだ。
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昨今インフレが話題だ。米国ではインフレ率が急上昇し、国内でも原油高資源高の影響やガソリンや日常食品などで値上げが続いている。コロナ禍からの経済回復がまだ完全ではないなか、インフレが襲うと、不況下で物価上昇が起きる「スタグフレーション」の声さえ聞かれる。
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コロナ禍の拡大は続いているが、株式市場は好調を維持している。この背景には何があるのか。「貨幣からの逃避を垣間見た、それが今年のマーケットだった」。そう話すのは、フィデリティ投信のマクロストラテジスト重見吉徳氏だ。
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製造業の急回復で銅などのコモディティ価格が上昇し始め、米国経済が正常化すれば労働力不足となり、インフレが起こりやすくなるのでは、といったことが心配されている。しかし、これらは株価下落をもたらすとは思えない。“経済回復・正常化”→モノの価格・賃金の上昇→インフレ懸念・金利上昇→“経済悪化・株価下落”という因果は、経済回復・正常化→経済悪化・株価下落であり、矛盾しているからだ。
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昨今、原油価格の高騰などから、景気後退とインフレ(物価上昇)が同時に起こるスタグフレーションを警戒する声が聞かれる。1970年代のオイルショックの際には、景気後退で給料が上がらないにもかかわらず物価が上昇し、生活者にとって極めて厳しい状況となった。
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7月から9月にかけて、各社とも工場の操業を停止せざるを得ないほどの減産を強いられた。この問題、本当に理由が中々報道されていないように思う。メディアの多くでは「半導体」が減産の原因だとされてきた。実際のところ、半導体そのものも理由の一部ではあるのだが、あくまでも一部でしかない。生産に大ブレーキをかけたのはもっとごく普通の部品である。
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