インフレもたらしたサプライチェーン混乱は、ピークを超えた?(3/4 ページ)

» 2021年12月10日 07時00分 公開
[斎藤健二ITmedia]

難しいかじ取りを迫られる中央銀行

 たとえインフレ率上昇が一時的だとしても、難しいかじ取りを迫られるのが中央銀行、特に米FRBだ。

 コロナ禍で世界各国はできる限りの金融緩和を行い、利下げと共に中央銀行が資産を買い入れる量的緩和(QE)を行った。それにより、ロックダウンに備えたり、ワクチン接種など対策を打つまでの時間を稼いだりしてきたわけだが、経済活動再開の目処がついてきた今は、緩和状況をどう戻していくかの時期に来ている。

 前回、リーマンショックの際に行った金融緩和からの正常化の流れはこうだだった。まず資産買い入れペースを減速するテーパリングを実施する。続いて政策金利の利上げを行い、2年ほど待ってから資産買い入れで膨らんだバランスシートの縮小(QT)に入る。これが従来の公式だ。

 現在、米FRBはテーパリングを始めている。さらにパウエル議長は11月30日の議会証言でインフレ警戒的なコメントを出した。「テーパリング加速はほぼ確実。3月中旬には買い入れを終わらせる方向に変えるだろう。テーパリングが終われば利上げができる。利上げの自由度が増すからだ」と、吉川氏は解説する。

 問題はQE解消後に、いつどのくらいのペースで利上げを行うかだ。インフレが収まってくるなら、利上げを急ぐ必要はない。あまりに性急な利上げは経済の回復に水を差す。一方で、インフレが進むなら利上げは必須だ。「物価が上がっているのに金利を上げないと、実質金利が下がってしまい、実質的に緩和が大きくなってしまう」(吉川氏)からだ。

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