私個人の話をしますと、20代から30代前半は、仕事をスポーツのようにとらえていました。そのため販売個数や市場シェアなどの数値を追いかけ、目標をクリアすることを面白がっていました。競合他社に勝てば喜び、負ければ悔しがる。いい成績をあげて社内で評価が高まればうれしい、評価が下がれば落ち込む。そういった上がり下がりの波が、自分の仕事意欲の刺激剤でもありました。振り返れば、「情的な楽しい」がベースの日々だったように思います。
ところが30代半ば過ぎからはそうしたスポーツ的な激しい仕事の繰り返しに飽きがきたり、疑問がわいたりして、趣味生活を重視する時期がきます。仕事はほどほどに抑え、趣味の充実に走ります。趣味からもいろいろな楽しみや刺激を得ましたが、やはり消費や所有からくる喜びは「情」寄りのものです。長続きしませんし、肚ごたえが足りません。
そんな中で、自分は自分の能力と意志を使って、世の中に何を届ける存在になりたいのかという問いをつねに投げかけていました。そんなとき、運命的な言葉に出合ったのです。それは中国の古いことわざでした――。
一年の繁栄を願わば、穀物を育てよ。
十年の繁栄を願わば、樹を育てよ。
百年の繁栄を願わば、人を育てよ。
「そうだ、自分が献身したいのは人の心を育む仕事ではないか。そして自分なりに考える教育の新しい方法・表現を世の中に届けてみたい!」と、一筋の光が見えました。その瞬間以来、仕事が貢献的・使命的な活動に切り替わり、「意的な楽しい」を志向するようになったのです。サラリーマンをやめて個人自営業になり、経済的には毎年ドタバタの奮闘が続きますが、心は「泰」となり、健やかな仕事生活が続きます。
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