CDが苦戦しているのに、なぜ曲を取り込む「ラクレコ」は売れているのか週末に「へえ」な話(2/4 ページ)

» 2021年12月18日 08時12分 公開
[土肥義則ITmedia]

好調の要因は3つ

 繰り返しになるが、CD市場は右肩下がりである。音楽をどのような方法で聴いているのかという調査でも、「YouTube」が最も多く、次いで「テレビ」「サブスクの配信サービス」である。そんな状態なのに、なぜCDをスマホに取り込むアイテムが売れているのだろうか。開発に携わった同社の担当者に聞いたところ、3つの理由が浮かんできた。

音楽を聴く方法(出典:日本レコード協会)

 1つめは、家で眠っているCDの存在だ。若いころに購入したCDがあるものの、自宅にオーディオ機器がない。パソコンで聴こうと思ったら聴けるが、「面倒だな」「移動しながら聴きたい」という気持ちがあって、ケースにほこりがたまったまま。たくさんあるCDをそのままにしておくのはもったいないので、“整理整頓の一環”として、購入している人もいるようだ。

 ただ、しっくりこない点もある。家にあるCDをすべて取り込めば、それで終わりだ。ケースには再びほこりがたまってしまうし、本体も使わない状況になる。となると、「中古のラクレコを買って、またそれを売ればいいんじゃないの?」と思ってしまう。や、ちょっとイジワルなことを考えてしまったが、こうした使い方をしている人もいそうである。

売れている理由は3つ

 2つめは、サブスクの配信サービスに“モレ”があることだ。どういう意味かというと、自分が好きなアーティスの曲が聴きたいのに、その人の曲が配信されていない、または好きな曲が聴けないケースがある。そうした人たちはCDを買って、曲を取り込んでいるようだ。

 ふむふむ、個人的にこれはよーく分かる。筆者も某サブスクのサービスを利用しているが、日本人アーティストのNさんの曲を聴こうとしたところ、配信されていなかったのである。「絶対に聴きたい」と思ったわけではないので「ま、いいか」とあきらめたが、熱狂的なファンは違う。CDを購入して、“モレ”なく音楽を聴く。そうした層にも、ラクレコはウケているようだ。

 3つめは、「推し活(おしかつ)」需要である。推し活とは、好きな芸能人やアーティストを応援することを意味するが、なぜこうした層にウケているのだろうか。2つめの理由と重なる部分があるが、推しているアーティストのCDが発売されても、サブスクで聴けるのは後日、またはそのCDに入っている曲すべては聴けないといったケースがある。しかし、ファンにとっては、少しでも早く聴きたいし、すべて聴きたいと思う。

 実際、〇月〇日、ラクレコの売り上げが大きく伸びた。同社の担当者は「ん? なぜ?」と気になって、いろいろ調べたところ、たどりついたのが某アイドルのCDが発売された日だったのだ。あと、ラクレコにCDを取り込むことによって、ビルボードジャパンの「ルックアップ」チャート(CDをパソコンなどの機器で、グレースノートメディアベースを使用したソフトで読み取った回数)に集計されるので、お気に入りアーティストを応援することができる。こうしたファンのココロをつかむ機能を搭載していることも、好調の要因として挙げられる。

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