ブリヂストン「中国企業への事業売却」を叩くムードが、日本の衰退につながったワケスピン経済の歩き方(4/6 ページ)

» 2021年12月21日 10時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

日本型組織の典型的な負けパターン

 「稼ぐ力」が脅かされていく中で、重くのしかかっているのが、「多角化事業」である。防振ゴム、ベルト、ホース、樹脂配管などの化工品や、米国で展開する屋根材、空気バネ、そしてスポーツサイクル事業である。これらは20年時点で、6000億円弱の売り上げを誇りながら、営業利益はたったの2億円しかなかった。

 この「稼げない」という問題を放置していれば、いずれ海外のライバルに追いつかれ、「世界一」の座から転落して、本業のタイヤからもどんどん技術者が流出してしまうだろう。

 先ほども申し上げたように、稼げないことは研究開発や設備投資ができないということなので、技術者たちに満足する給料を払えず、開発環境も提供できない。冷遇されれば自らより環境のいいところへ転職する技術者もいるし、海外のライバルはいとも簡単に引き抜きができる。

本業のタイヤはどうなる?

 不採算部門をリストラせず雇用を維持することは、一見すると、「技術者を守っている」のように見えるが、実際のところは、「稼げない」という病を組織全体に広げて、「技術者の流出」を招いているだけなのである。

 これは日本型組織の典型的な負けパターンだ。「みんなが助かる道」に固執するあまり、被害を広げて「みんなで仲良く衰退していく」という結果を招く。組織のリーダーたちがリスクを嫌がり、責任をかぶせられるのを嫌がって、「痛みを伴う改革」の決断ができない。延々と問題を先送りにした結果、「痛み」どころではない大惨事を招く。

 これは太平洋戦争から、白物家電、半導体まで脈々と受け継がれている日本型組織の伝統ともいうべき「負けパターン」である。

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