「バッカじゃねえの! 中国企業に事業を売却している時点で技術がダダ漏れなんだよ、そんなことも分からねえのか」という怒声が全方向から聞こえてきそうだが、日本のお家芸がどのように衰退してきたのかという歴史を客観的に振り返れば、優秀な技術者が海外に流出してしまった最大の原因は、やるべきタイミングに「事業再編」を決断できず、海外のライバルに稼ぐ力で惨敗してしまったことが大きい。
要するに、グローバル競争に背を向けて自分たちの殻に閉じこもっているうちに急速に貧しくなって、技術者を食わせてやることができなくなってしまったのだ。
その代表が、日本衰退の象徴となっている半導体だ。
かつて世界シェア6割を占めた日の丸半導体が、なぜこうも分かりやすく衰退したのかということには、「韓国が技術をパクったからだ!」とか「日本企業が冷遇した優秀な技術者を、札束で頬を叩くように引き抜いたからだ」という、「善良な日本人がアコギな外国人にハメられた説」を盛んに吹聴をする人たちがいるが、これはあくまで「結果」に過ぎない。
このような「技術者バーゲンセール」という状況を招いた原因は、半導体技術を持つ企業が頑なに現状維持に固執したことである。
富士通で半導体部門のトップを務め、現在は半導体の設計ベンチャーを経営する藤井滋氏がそのあたりを端的に語っているので、引用させていただこう。
『欧米では1990年代に半導体事業が総合電機からスピンアウトした。日本でそれが起こったのは2000年になってからだ。そうしてできたのがエルピーダ(メモリ)とルネサス(エレクトロニクス)の2社だが、意思決定が10年以上遅かった』(東洋経済オンライン 21年9月22日)
ご存じのように日の丸半導体は、総合家電メーカーの一部門、自動車メーカーの下請け的な存在で成長をしてきた。「安くて高品質」というのも、「親を喜ばすいい子」が生きる知恵として磨いたスキルだ。が、そんなドメドメの「家内制手工業」のような前近代的なビジネスモデルが、し烈なグローバル競争の中で生き残っていけるわけがない。
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