ブリヂストン「中国企業への事業売却」を叩くムードが、日本の衰退につながったワケスピン経済の歩き方(1/6 ページ)

» 2021年12月21日 10時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

 ブリヂストンよ、お前もか――。大企業が経営の効率化を目指して、大規模なリストラを相次いで発表する最近の流れから、そんな風に憤りを覚えた方も少なくないのではないか。

 12月19日、『朝日新聞』が「ブリヂストン、従業員8千人を転籍へ 防振ゴム事業は中国企業に売却」と報道した。来年夏までに防振ゴム事業を中国企業に、自動車部品などの化成品ソリューション事業も投資ファンドに売却、国内外で22カ所の事業所を譲渡し、従業員約8000人に転籍を求めるという。

ブリヂストンが大規模なリストラ(提供:ゲッティイメージズ)

 ブリヂストンといえば、世界に114(2021年5月時点)の生産拠点をもち、150を超える国々で事業を展開し、ミシュランとし烈な世界一シェア争いを続けているがことでも知られている。そんな日本を代表するグローバル企業が、中国企業に事業の事業を売ってしまう。しかも、それが日本経済を支えてきた自動車産業の中でも「車の関節」と呼ばれ、なくてはならない防振ゴム事業。ダブルパンチで、ネット上にはネガティブな反応が多く見られる。

 そこで目につくのは「中国に日本の技術がどんどん買い叩かれる」という批判だ。昨今の経済安全保障の議論とからめて、収益性が低い部門だからと切り売りを続けていくと、技術だけではなく人材も流出するので、日の丸半導体と同じ衰退の道をたどってしまうというのだ。中には、防振ゴム技術は軍事転用も可能だから、中国や韓国企業への事業売却を規制せよ、なんて主張をする方もいらっしゃる。

 マスコミが連日のように「中国の脅威」を叫ぶ中で、このような鎖国的な考えに流れるのはよく理解できる。が、残念ながらこういうムードの高まりが逆に、日本を衰退させてしまう恐れもある。

 今回のブリヂストンのような「事業再編」の動きを批判したり、叩いたりすればするほど、優秀な日本人技術者が、中国や韓国など新興企業にどんどん流れてしまうからだ。

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