映像作品を観(み)たくなったとき、かつてはDVDやBlu-ray(ブルーレイ)を買うか、レンタルショップで借りてくるかという一手間が必要だった。
ところが今やインターネットで動画を視聴するのが当たり前になっている。AmazonプライムビデオやNetflixといった定額制動画配信サービス(SVOD)が普及したことで、自分の観たい作品をすぐに視聴できる環境が整ったからだ。
この視聴様式の一大変化によって映像ビジネス業界は戦略の見直しを迫られている。収益化の軸を、DVDやブルーレイによるビデオパッケージ販売から移す必要が出てきているためだ。単に映像を観るだけであれば動画配信サービスを利用すればよく、DVDやブルーレイは記念グッズとして手元に残しておく側面が強まった。
日本映像ソフト協会のデータによると、2020年のビデオパッケージの売り上げは前年比で13.7%減少している。販売本数ベースで見ると18.2%下がった。販売本数の減少の割に売り上げが落ちていないのは、1枚あたりの単価が上がり、プレミア化が進んだためだ。
この一連のパラダイムシフトは、映像制作スタジオを複数持つ世界最大手のディズニーでも無縁ではない。ウォルト・ディズニー・カンパニーは2019年に米国で自社グループのコンテンツを中心とした動画配信サービス「Disney+(ディズニープラス)」の提供を開始した。日本では19年に「ディズニーデラックス」を開始し、その後20年に「ディズニープラス」と名称を変えて展開をしている。
15年に始まったAmazonプライムビデオやNetflixに比べると後発ではあるものの、ディズニー作品やピクサー作品、スター・ウォーズシリーズやマーベルシリーズ、ナショナル ジオグラフィックなどをラインアップに加えて差別化を図ってきた。
21年10月、ウォルト・ディズニー・ジャパンは都内で会見を開き、ディズニープラスに、ディズニー、ピクサー、マーベル、スター・ウォーズ、ナショナル ジオグラフィックに加えて、総合エンターテインメントが楽しめる新ブランド、スターを加え、新たにアジア太平洋地域におけるコンテンツ制作に力を入れていくことを発表した。
加えて日本のドラマやアニメ、韓国ドラマをディズニープラスでも配信することを発表している。それまで自社コンテンツ一色だったディズニープラスにとって、これは大きな方向転換といえるだろう。
ディズニープラスの新たな戦略とは何か。ITmedia ビジネスオンラインはウォルト・ディズニー・ジャパンのキャロル・チョイ社長に単独インタビューを実施。その狙いを聞いた。前後編でお届けする。
Carol Choi(キャロル・チョイ ) 2006年にウォルト・ディズニー・カンパニーに入社し、数々のエグゼクティブポジションを経験。20年2月までウォルト・ディズニー・コリアのマネージング・ディレクターを務め、2020年3月にウォルト・ディズニー・ジャパンの代表取締役社長に就任、現在はアジア・パシフィック(APAC)全体のフランチャイズ・マーケティング責任者も兼務(撮影:山崎裕一)
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