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» 2021年12月27日 05時00分 公開

米国が直面する「大退職時代」――若手人材を中心に、日本企業にも到来しそうなワケ2021年のニュース振り返り(4/4 ページ)

[川上敬太郎,ITmedia]
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 12月19日、日本経済新聞は『転職希望増、5人に1人 25〜34歳、スキル向上重視』と題する記事の中で、「25〜34歳の5人に1人が転職希望者になった」と指摘しています。さらに、21年7〜9月の25〜34歳の転職希望者が237万人に及ぶとする、総務省の労働力調査の結果を紹介しています。

 今年話題になったニュースの中に45歳定年制の導入がありました。しかし、45歳よりはるか手前である25〜34歳の就業者のうち、5分の1が転職希望者なのです。この層を含む45歳未満の転職希望者にフォーカスしてみると、その動向には顕著な変化が表れています。記事でも紹介されている労働力調査と、同じく総務省が発表している人口推計の推移を照合したのが以下のグラフです。

各種政府統計を基に筆者が作成

 年齢層別の転職希望者数が確認可能な13年以降の推移をみると、人口については減少の一途をたどっていることが分かります。一方、転職希望者数の方は、16年まで人口に沿って減少しているものの、17年にやや上昇し19年以降は顕著に右肩上がりとなっています。

 このグラフを見る限り、45歳定年制を議論する前に、そもそも45歳まで社員が会社内に残ってくれているのかどうかを心配する必要があります。

 現在、働き手の「選択肢」は急激に増加しています。スマートフォンを使っていつでもどこでも求人広告を見られるようなり、求人サイトのバリエーションも広がりました。これまでは社内で口にすることもはばかられた副業も、今では身近なものとなりつつあります。副業を探すためのサイトや地方創生とテレワークを絡めた行政の取り組み、ギグワークの仕事も増えました。SNSを利用したスカウティングサービスも徐々に広がってきています。

 これらの選択肢は、今後もさらに多様化していくと想定できます。働き手は、多様な選択肢の中から自らの志向に合ったワークスタイルを選ぶ傾向がより強くなっていくはずです。そして、働き手が新しい道を選択しようとするとき、これまで黙って耐え忍ぶしかなかった“理不尽な不文律”の存在は、退職を決意させるきっかけに十分なり得ます。

日本にも「大退職時代」が来るか

 米国では、自主的に退職を選ぶ社員が増える大退職時代(ザ・グレート・レジグネーション/The Great Resignation)が到来しているといわれています。先ほどのグラフを見る限り、日本でも同様の事態が生じる可能性があり得ます。

画像はイメージ、出所:ゲッティイメージズ

 会社は優秀な社員を引き留められるだけの魅力を高めるため、今以上に知恵を絞らなければなりません。そんな状況にもかかわらず、これまでのような“理不尽な不文律”を押し付けて社員をマネジメントするスタイルを続けているようでは、どんどん時代錯誤感を強めていくはずです。

 「テレワークは非常手段、仕事は出社して行うのが原則」

 「職場に迷惑だから、有給休暇の使用は極力控えるべき」

 「上司が会社にいる間、部下は先に帰ってはならない」

 「テレビ会議システムは失礼なので、商談では使用禁止」

 「SNSを使ったやりとりは、顧客に失礼なので禁止」

 これらはほんの一例です。日本中の会社にはえたいの知れない無数の“理不尽な不文律”が存在しています。そんな“理不尽な不文律”の押し付けが人材流出を加速させ、やがて会社を日本版大退職時代の餌食にしてしまうのだと思います。

著者プロフィール・川上敬太郎(かわかみけいたろう)

ワークスタイル研究家。1973年三重県津市出身。愛知大学文学部卒業後、大手人材サービス企業の事業責任者を経て転職。業界専門誌『月刊人材ビジネス』営業推進部部長 兼 編集委員、広報・マーケティング・経営企画・人事部門等の役員・管理職、調査機関『しゅふJOB総合研究所』所長、厚生労働省委託事業検討会委員等を務める。雇用労働分野に20年以上携わり、仕事と家庭の両立を希望する“働く主婦・主夫層”の声のべ3万5000人以上を調査したレポートは200本を超える。NHK「あさイチ」他メディア出演多数。

現在は、『人材サービスの公益的発展を考える会』主宰、『ヒトラボ』編集長、しゅふJOB総研 研究顧問、すばる審査評価機構株式会社 非常勤監査役、JCAST会社ウォッチ解説者の他、執筆、講演、広報ブランディングアドバイザリー等の活動に従事。日本労務学会員。男女の双子を含む4児の父で兼業主夫。


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