これまで30種以上(大宮)のキーホルダーを展開しているが、人気があったアイテムが2つある。1つめは、第2弾で発売された「中央デパート」だ。
「ほう。大宮に『中央デパート』ってものがあるのね。今度、行ってみようかな」と思われたかもしれないが、今はもうない。駅の東口にあった大宮中央デパートは、黒い壁が特徴でレトロな雰囲気が漂っていたが、2017年6月に閉店した。
もう1つは、第3弾で発売された娯楽施設の「ハタボウル」である。こちらも11年4月に閉店しているが、当時は映画館やボウリング場などが入っていた。地元の人に聞いたところ「子どものころ、親と一緒に行ったなあ」「初デートでハタボウルに行ったよ」といった声も。
SNSをチェックすると、「中央デパート」と「ハタボウル」のキーホルダーが話題になっていて、その背景に何があるのかというと、懐かしく感じられるかどうかである。ロゴを見るだけで、建物を眺めるだけで、当時の思い出が蘇(よみがえ)る。100人いれば100通りのストーリーがあって、その話を聞いた(または読んだ)人たちが共感する。「オレもそーいえば……」「ワタシも子どものころに行ったなあ」といった感じで。といったこともあって、購入しているのは40〜50代が多い。
ちなみに、中央デパートとハタボウルにとってのメリットはなんだろうか。現在、大宮に存在しないので、キーホルダーをつくっても宣伝になるわけでもなければ、お客が来るわけでもない。中島さんはロゴなどの使用許可を得るために、現在の担当者と面会することに。先方にとってのメリットはあまりないので、「断られるかな」と思ったそうだが、快く承諾してくれたそうだ。
なぜ、先方は「OK」の返事をしたのか。これは推測になるが、大宮で働いていた人たちが楽しかったからではないだろうか。当然、職場を失うというつらい思い出もあるはずだが、キーホルダーという形で“復活”させると、地元の人は「懐かしいなあ」「楽しかったなあ」と喜んでくれるかもしれない。そんな心意気から、この商品が生まれたのではないだろうか。損得勘定抜きの世界である。
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