このような疑問に対しては、19年に厚生労働省が実施した裁量労働制実態調査が参考となります。これは裁量労働の適用事業所と非適用事業所(有効回答数はそれぞれ6489件・7746件)、適用労働者と非適用労働者(有効回答数はそれぞれ4万7390件・4万714件)に対し、運用の実態や適用の有無による労働時間の差異などを調査したものです。
余談ですが、読者の皆さんの中には、過去の裁量労働制に関する調査について、データの取り扱いが国会で問題視されたことを記憶されている方もいらっしゃるかもしれません。本調査はその反省を踏まえ、新たに実施されたものとなります。
まず労働時間の実態をみると、裁量労働制の適用労働者は非適用労働者よりも時間数が確かに長くなってはいましたが、その差はあまり大きなものではありませんでした。1週間の平均実労働時間数でいえば、適用労働者は45時間18分と、非適用労働者の43時間02分を上回っています。とはいえ、その差は2時間16分にすぎず、週5勤務として1日に換算すると30分にも満たない時間です。
加えて、裁量労働制の適用に対する満足度そのものが非常に高くなっていました。裁量労働制適用労働者を対象に、適用に「満足している」「やや満足している」という回答の割合を合計すると、専門業務型では80%、企画業務型では83.7%となっていました。
もちろん各社各様の運用があるでしょうし、実態として定額働かせ放題となっている企業もゼロではないでしょう。とはいえ調査の結果から、おおむね労働者の満足に資するように、本人の意向等を十分に踏まえた運用をしているケースが多いようです。
このことから、裁量労働制は現状厳しい制約こそあれど、適用できる・向いている企業にとっては働きやすい環境づくりに向けた、一つの在り方だということができます。次回からは、どのような企業・職種が裁量労働に適しているのかを解説していきます。
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