――社長に就任して2年が過ぎました。いま最重要課題としては何を挙げますか。
財務指標ばかりを追い求めてきたので、非財務指標もしっかりと経営のKPI(重要業績評価指標)に入れると宣言したのが20年です。事業とサステナビリティー(持続的成長)を一体にするのが大事だと考えています。
このために当社は「Fujitsu Uvance」という新しい事業ブランドを立ち上げました。説明が不十分な点もあったので、22年度はしっかりと具体化して進めていきたいと思います。
いままでITソリューション、アプリケーションパッケージは人手を機械化して生産の効率性を上げることを主眼においていましたが、今後はこれにプラスしてカーボンニュートラルの視点も求められます。KPIのソリューションにカーボンニュートラルを埋め込みたいと思います。
脱炭素だけでなくTNFD(自然関連情報開示)も求められてきています。二酸化炭素の排出量を測定し、それを削減しなければなりませんが、1社1社で実現することは難しいです。そのような社会課題に対応したソリューションが「Fujitsu Uvance」なのです。
「Fujitsu Uvance」を使ってもらえば、脱炭素や食品ロスなどの課題において、数字上の効果が出せますから、さまざまな企業に「一緒にやりましょう」と提案していきたいと考えています。
――1社1社での取り組みでは社会課題の解決は難しくなっているのですね。
そうした背景から、今までやってきた業種でのカットはやめました。金融、流通といった業種ごとではなく、例えば「Healthy Living」といったエリアごとのソリューションを考えようとしています。今までのビジネスでは電子カルテだけだったのが、生命保険もあるし医療費の支払い方法もあります。
自治体との連携では、トータルでソリューションを提供しなければならないことが山ほどあることに気付かされました。非常に残念に思ったのは、全ての業種、業態、自治体が富士通の顧客だったにもかかわらず、多くの自治体がFAXを使っているなど、そういう隙間をあけてしまったことです。
大病院がIT化していても、その周辺の人たちがIT化に合わせていないと、全体がつながらないのです。そこを解決するのが富士通の大きな課題です。
――まさに一つの組織だけがIT化やDXに取り組んでも成功しないということですね。
社会の課題を起点としたビジネスに変えることが必要です。私もかつては金融SE(システムエンジニア)として金融の分野ばかりを担当してきましたが、金融だけでは解決しません。製造業もサプライチェーン、トランスポーテーションと一体となって経営していく必要があります。別の会社まで巻き込まないと、有効な経営ができなくなっています。
――経営のリーダーとして最も大事にしていることは何ですか。
社員とのコミュニケーションです。年間で20回以上のタウンホールミーティングをやってきました。オンラインで一度に千人単位で国境を越えて直接対話して質問に答えています。人事制度をはじめとしてものすごいスピードで改革を進めてきました。
コロナ禍もあって先が見えない中、社員としては少々不安もたまるところもあると思います。そうした状況で、この会社はどこへ向かうのかという疑問にトップ自らが、一方通行でなく直接答えることが重要だと思います。
――コロナ禍ではどのようなマネジメントが求められているのですか?
この状況では、二項対立的な要求に同時に応えるマネジメント、リーダーシップが求められています。例えば、在宅勤務をしたい人が80%いる一方で、1人で自宅でテレワークをするのは苦痛だから事務所に来たい人が80%いることもあります。足し算をしても100%にはなりません。
どちらの要求もあるということで、この両方を満たす経営をしないと、人が魅力的に感じてくれないし、いい人も来てくれません。バランスをとって6割くらいに抑えて、良い案配に足して2で割るといい、などといわれますが、今はそれでは信任が得られないと思います。
両方成り立たせることが求められているので、われわれは「Work Life Shift2.0」を提案し、放任主義的に見えるかもしれませんが(働き方は)従業員の自律的な判断に任せています。
ただこれが全て正しいとは思っていないので、やりながら手直しもしていきます。大事なのはサ−ベイをして意見を聞いて、常に改善することです。質問に答えてもらったにもかかわらず、経営側が何もしないのは最悪です。
このため22年には「Work Life Shift2.0」をバージョンアップして「3.0」にするかもしれません。従業員が最大のパフォーマンスを発揮できる環境や制度が何かを考え、それでも考えつかなければ従業員に聞くしかない。だから対話がもっとも重要だと思います。
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