宮下: 今、お見せしたものの進化版「TTTV2」も開発しています。まだ試作検討中の段階ですが、お見せしますね。世界初公開になります(笑)
――TTTVとは形状が少し変わりますね。どのような機能が追加されたのでしょうか?
宮下: 液体をスプレーして混ぜる構造はTTTVと同じですが、食品用のフードプリンターと融合させました。ケーキに着色料で写真をプリントするときなどに使われるものです。例えば、クラッカーにピザの写真を、白米にちらしずしの写真を印刷するとともに、味もつけられます。
TTTVは「舐める」ことを想定して設計していますが、TTTV2はパンにジャム、白米に明太子などのおかずをプリントして「食べる」ことを想定して設計しています。かなり「食事」に近い体験を提供できると思います。
――視覚情報が追加されることで一気に「食事感」が強まりそうですね。まだまだ試作段階かと思いますが、現時点の課題としてはどのようなことが挙げられるのでしょうか?
宮下: 2つありますね。1つ目は、まだ「どこを食べても同じ味がしてしまうこと」です。例えば、パンにピザの写真を印刷したとします。そこにはバジルやソーセージなどさまざまな具材が印刷されていますが、それぞれに別の味をつけることはまだできていません。味のスプレーを全体に噴霧しているためです。
もう1つの課題は「香り」です。人々の食体験において「味覚」が占める割合は半分以下とも言われています。TTTV2では「食べる」という体験を実現し、印刷によって視覚情報も加えているものの、まだ「香り」の再現は完全に実現していません。
味を再現する液体はほぼ無臭なので、白米にちらしずしの写真を印刷しても、強い酢の香りは出ていません。クエン酸によってわずかに酸っぱい香りが出たり、スクロースによってわずかに綿菓子のような香りが出たりはしますが、匂いの再現のために入れている溶液ではないので、追加の改良が必要だと思います。
味についても、まだ完全に再現しきれていないものもあります。例えば、香りと痺れが特徴的な香辛料「山椒」を今ある10種類の液体で再現するのは難しいです。
麻婆豆腐の味を再現するとき、カプサイシンを使って辛味の表現まではできるのですが、山椒の香りや痺れなども再現できたら、もっとリアリティーは高まると思います。
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