マンガ『ドラえもん』に登場するひみつ道具「グルメテーブルかけ」をご存じだろうか。テーブルクロス型の道具で、これをテーブルや床に敷いて食べたい料理をリクエストするとその料理が出現するというものだ。
味も絶品で、マンガ内では自称食通の「スネ夫」がおいしいとほめちぎっているシーンもある。そんな夢みたいな1コマが現実になる日も近いかもしれない。
明治大学総合数理学部先端メディアサイエンス学科長の宮下芳明教授が2020年10月、舐めると味がするテレビ「味わうテレビ」(以下、TTTV)を開発・発表した。「ピザ」の映像が映し出された画面を舐めると、ピザの味が楽しめるという。どういう仕組みなのか? 実用化された場合、どのような業界に影響が出てくるのか? 宮下氏に話を聞いてみた。
――味わうテレビはどういう製品なのでしょうか?
宮下: 10種類の液体を混ぜて料理の味を再現し、液晶画面上のシートに吹きかけます。そこを舐めると、画面に映った料理と同じ味が楽しめるという機器です。
10種類の液体は、人間が感じる「味」を構成する基本5味(塩味、甘味、酸味、苦味、うまみ)と辛味や渋味、アルコールなどです。学術的な「味覚」は基本5味でいいのですが、食体験の再現度を高めるために、痛覚に分類される辛味などの要素も追加しました。
塩味は塩化ナトリウム、甘味はスクロース(砂糖の主成分)、酸味はクエン酸、苦味は塩酸キニーネ、うまみはグルタミン酸ナトリウムを使用しています。これらの液体を配分量通りに混ぜれば、ピザでもなんでも、いろいろな食べ物の味が再現できるというわけです。
――塩味や酸味などを混ぜるだけで料理の味を再現できるのが特徴なんですね。ひとくくりに「ピザ」と言っても、それぞれがイメージするピザの味は異なると思うのですが、味を再現するための塩味などの配分量は何を参照しているのでしょうか?
宮下: 味覚センサーという、基本5味などの強さを計測する機器を使用します。やり方としては、まず料理を攪拌(かくはん)して液体にします。それを味覚センサーで計測すると、塩味や酸味などの強さが数値として得られます。それに合わせて、液体を混ぜ合わせることで料理の味を再現できるようになっています。
現在は20種類ほどの料理のデータがTTTVに入っています。味覚センサーを購入しようとすると1000万円ほどするのと、1回の料理の計測に数万円かかるので、料理のラインアップを増やそうと思ってもなかなか難しいんですよね(笑)
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