――実用化についてはどのように考えられていますか?
宮下: 2〜3年以内に実現したいと思っています。ハードウェアのコストを考えたら10万円くらいで販売できるんじゃないですかね。インターネットにつながるようにして、食べたい味をダウンロードする仕組みにすべきだと考えています。
料理の写真を見て「どんな味がするか」を推定するAIの研究も進んでいると聞きます。そういったテクノロジーと組み合わせることで、テレビの映像やネット上にある画像からその味をすぐに再現することもできるようになってくると思います。
コロナ禍で外食に大きな規制がかけられました。この製品があれば、家にいながらさまざまな料理を味見したり、料理を特定の味にすることができたりするので、家電や食品業界に大きなインパクトを与えることになると思います。実際に家電メーカーと話もしています。
――それぞれの業界にどういった影響があると考えられていますか?
宮下: まず、家電業界では「調味家電」という新しいジャンルが確立できると思います。今までプロしか出せなかった味の加減を、機械が代行して細かく制御できるようになります。「塩少々」などのあいまいな指示ではなく、正確な塩の配合量が明確になり、家庭料理をぐんとプロの味に近づけることができます。
食品業界にとっても新たな市場開拓につながります。自宅でテレビに映し出された料理や一流レストランのプロの味を再現できたら「食品業界の商売は上がったりじゃないか」と思われるかもしれませんが、むしろ「味コンテンツビジネス」という新しい展開が期待できます。
料理を味覚センサーで測り、そのデータを有料コンテンツとして売るというビジネスです。ダウンロードごとに費用がかかるのもありだし、サブスクリプション型もあり得ると思います。ファミリーレストランの味が楽しめる「基本プラン」と、それに加えて一流シェフの味も楽しめる「高級プラン」とか。
――いつもの料理がいきなり一流シェフの味になるなんて夢みたいですね。どれくらいの市場があると考えられていますか?
宮下: 食事には、空腹を満たすことや栄養摂取のほかに、味を楽しむエンターテインメント的な側面がありますよね。TTTVシリーズは、そのニーズを満たす製品になり得ると思うので、現在、人々がそこに使っている金額がそのまま市場に流れると考えてもいいのかなと思っています。
ECやデリバリーのおかげで、遠くの店の料理を「待てば食べられる」世界が定着した。将来的に、TTTVシリーズによって「一瞬で食べられる」世界が実現するかもしれない。食体験や食を取り巻くビジネスはどう変わっていくのか、楽しみだ。
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