ここ数年で事業が大きく拡大した楽天証券。口座数は700万を超え、国内株式の売買シェアは29%に達し、SBI証券と二強の座を確実にした。一方で、急拡大の弊害も現れてきた。
その1つが、成長のけん引役の1つとなったクレジットカードによる投信積立サービスだ。楽天市場での還元率がアップするSPUという仕組みと、投信の買い付けに1%のポイントを還元する手法が大成功。2018年10月のスタートから3年間で、月間投信積立設定額は6倍以上となり、761億円を超えた。
月間761億円にのぼる投信積立設定額。7割が楽天カードによるものだとすれば、付与するポイントだけで毎月5億円以上のコストがかかっている
21年12月期の売上高にあたる営業収益は、23.9%増加して895億7500万円。一方で、営業利益は3.3%増加の155億9200万円にとどまった。その理由はポイントやカード決済費用のコストを中心とした取引関係費が大きく膨らんだことだ。前年から41.5%増加し、387億6300万円と費用の中で最大だ。
「数年でリカバリーできるだろうという採算性を見て始めたが、どんどん信託報酬の引き下げがあり、販売手数料ゼロ化もあって、最初の目論見が外れた。低報酬投資信託についての採算性は合わなくなった」
21年12月期の決算説明会で、楠雄治社長はこう話した。投資信託からの収益源は販売時手数料と、継続的に投資家が支払う信託報酬がある。19年12月にすべての投信の販売手数料は無料化(ノーロード)され、さらに信託報酬を大きく引き下げた低コストインデックスファンドが人気となった。このことが、当初想定した利益構造を狂わせた。
楠雄治社長
- 転機迎える楽天証券 クレカ積立の還元率を一部0.2%に引き下げ
楽天証券は、これまで積み立て額の1%を還元していたクレジットカードによる投資信託積立の還元率を変更する。9月から、一部の投資信託については0.2%に引き下げる。楽天証券は4月から、保有する投資信託に付与するポイントを引き下げる予定で、相次ぐ還元の引き下げに、ネットでは「改悪」の声が飛び交っている。
- 楽天証券、投信に付与するポイントを改悪 毎月付与を中止
楽天証券は2022年4月から、保有する投資信託に対するポイント付与の方法を変更する。従来は、残高10万円ごとに3〜10ポイントを毎月還元していたが、4月からは残高が一定の額に達した際にポイントを付与する形に切り替える。
- 楽天証券、700万口座 積み立て設定金額も月額700億円超に
楽天証券は12月7日、証券口座数が700万口座に達したと発表した。併せて、9月末時点で投資信託の積み立て設定人数が188万人、設定金額は月額700億円を超えた。人数は前年同期比で122.5%増、金額は同162.5%増に拡大した。
- 楽天銀行と楽天証券のマネーブリッジ、優遇金利を0.04%に縮小
楽天銀行は、楽天証券との口座連携サービス「マネーブリッジ」において、従来一律0.1%としていた普通預金金利を、2022年4月から引き下げる。300万円を超える残高について、0.04%に縮小する。
- 楽天証券の改悪に勝機 SBI証券、投信引っ越しキャンペーン
SBI証券は2月1日、参加条件を満たした顧客全員を対象とした「ハズレなし!当社への投信お乗り換えが超おトクキャンペーン」を実施すると発表した。1月から開始した「投信お引越しプログラム」の好評を受けた企画となり、参加条件を満たした全員に1000から10万ポイントをプレゼントする。
- 楽天証券、米株積立サービス開始 ポイントでの米株買付も
楽天証券は12月15日、米国株取引サービスを拡充し、12月26日から米株積立を開始する。併せて、「ポイント投資」を拡充し、米国株も楽天ポイントで購入できるようにする。
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