石原: 発端は、18年にダイキンが発表した「CRESNECT(クレスネクト)構想」です。これは、協創型のデータプラットフォームを作ろうということで始まりました。一つのビルを例にすると、ダイキンのエアコンが導入されていれば、ダイキンはそのビルの空調データを得ることができます。同じようにパナソニックの照明が入っていれば、パナソニックはその照明データを持っている。
ビル全体で考えると、これら以外にもさまざまな会社の製品やサービスが導入されていると思います。ただ、個々の専門領域のデータは持っているが、そのデータを統合的に集約しているところがありませんでした。
そこで、そのビルに関わる全てのデータを統合して、各企業が相互に利用できるプラットフォームを作れば、新たなオフィス空間の価値が提供できるんじゃないかという考えで始まりました。
――1社でできないことを外部企業と共創していくことで、新たなイノベーションを起こそうという……。当時、外部企業の反応はいかがでしたか。
石原: 参画してもらうために各企業へ提案に行きました。ただ、肯定も否定もされませんでした(笑)。この構想は当時まだ“抽象論”でしかなかったので、「それで具体的に何ができるの?」と聞かれると、私たちも「うーん」って首をかしげるしかできませんでした。それで、どうすれば具体的にプロジェクトを前に進めるだろうと思って悶々としていたんです。
当時はまだ、point 0は生まれておらず、ダイキンの新規事業の一つとして開始していました。大企業の新規事業って10回行って1、2回当たれば大成功だねという世界だと思うのですが、これを各担当者ベースでみると、当然個人では1分の1になるんです。そうすると誰も失敗したくない。だから、自分の中では「終わっているプロジェクト」と感じていてもダラダラと続けてしまうといった問題が新規事業の現場にあるんですよね。
そこで、失敗することを前提に新しいものを試して、すぐに評価するというようなPDCAがハイスピードで回っていく仕掛けを作れないかなと考えました。
――その場として、「point 0 marunouchi」を開設したのですね。
石原: ええ。19年当時、コワーキングスペースなどが流行っていて、私たちもよく見学に行っていました。そんな中で、「待てよ。こうした場を作ればコミュニティーが生まれるし、コワーキングスペースとして開設するので利用者もいる。自分たちで実証実験を試すことができ、なおかつリアルタイムで市場評価ができるんじゃないか」と考えたんです。
先ほど話をしたPDCAがハイスピードで回る仕組みになるなと思って、「point 0 marunouchi」を開設しました。
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