社内でこの大赤字を支えたのが、BtoBのソフトウェア事業だ。プロジェクター開発は当初の見積もりが甘く赤字になってしまったが、事業としての可能性は感じられた。また本社に迷惑をかけず、自社内で赤字を吸収できたこともあり、程氏は再び、プロジェクター開発を進める。
「赤字はありましたが19年に最初に製造した約4万台が売り切れたので、プロジェクター自体には可能性を感じていました。さらに買っていただいた4万人のフィードバックもたくさんあります。次のモデルはどう進化させれば良いか、はっきり見えていたので『popIn Aladdin 2』の開発を始めました」(程氏)
popIn Aladdin 2では要望の多かったフルHD化を実現し、よりきめ細かな映像が映し出せるようにした。そしてもう1つの改良点が、投影位置の自由度を高めたことだ。「popIn Aladdin」シリーズは、天井にある引掛けシーリングに設置するため、プロジェクター自体を動かすことができない。
このため、初代モデルでは設置位置の正面の壁が空いていないとうまく映像の投影ができなかった。そこでpopIn Aladdin 2では、投影場所の自由度をより高くした。
「初代モデルを販売して、日本の間取りは複雑だと分かりました。例えば天井にはハリがあったり、家具やドアもあります。大画面で投影するとしようとすると、1箇所しか壁が空いていないことも多い。そこでドアやハリを避けながら、間取りにも合わられる必要がありましたが、そういう調整のできるレンズはありませんでした。
そこで独自レンズを開発するため、バイドゥの会長の前でプレゼンして、約1億円の予算を獲得し、日本の複雑な間取りに対応できるレンズを作りました。10万円以下のプロジェクターでこんなレンズを積んでいる製品はないと思います」(程氏)
そして、popInは20年9月にpopIn Aladdin 2(実勢価格9万9800円)の販売を開始。シリーズは、初代モデル、同2に加えて初代モデルをベースに低価格化したSEの3モデルで累計販売台数18万台を突破(22年1月現在)。また、popIn Aladdin 2は数多くのIoT家電の販売を手がけるプラススタイルでも21年販売ランキング1位を獲得するなど、高い人気を記録している。
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