このようにメディア向けのWebサービス開発の分野で、着実に結果を出して来た程氏だが、15年頃、プロジェクター開発のきっかけとなる出来事が起こる。第二子の誕生による生活の変化だ。
「家族で一緒にいても、子どもはすぐにスマートフォンを触ってYouTubeなどを見ます。また私と妻がそれぞれのスマートフォンを、子どもはiPadを見ているときもあります。親としては子どもが見ているものが分からないと不安ですし、さらに言えば一緒にいるのに別々のことをしているのは家族としておかしい。それを何か改善できるIoTデバイスはないかと考えました」(程氏)
そのとき程氏が見つけたのが、壁に貼ってある学習ポスターだった。常に壁にあるため、家族の会話のきっかけになり、子どもも自然に勉強できる。このポスターの内容を自動的に切り替えられる仕組みができたら、子どもも学習できるし、親も何を見ているか不安にもならないと考えた。
それを実現するのに最適なのがプロジェクターだと気がついた程氏は、家電量販店に行って売れている小型プロジェクターを8台買って帰り、家中に設置して実験したという。
「実験していたら、妻に邪魔だと怒られました。テレビや冷蔵庫、洗濯機などは家庭の中に決まった置き場所がありますが、そのほかの家電は置く位置が決まっていないので邪魔になります。特にプロジェクターは壁から距離が必要なので置き場所に課題がありました」(程氏)
中には短距離から投影できる短焦点モデルなどもあるが、子どもが倒してしまったり、光源を覗き込んでしまうリスクなどもあり、なかなかベストな置き場所が見つけられなかった。そんな中で発見したのが天井にある引掛けシーリングだ。
「調べると、引掛けシーリングの耐荷重は5キログラムあり、これだと思いました。シェーディングレールにプロジェクターを固定したものを実際に作り、半年ぐらい自宅で使いました」(程氏)
子どもと一緒に見るために、プロジェクターでさまざまなコンテンツを投影した。大画面を生かして映画を見たり、YouTubeも映し出した。すると3歳の子どもは大喜び。しかも、家中にプロジェクター置いたときは怒っていた奥様も喜んで使ってくれたという。そして17年頃、程氏は、このアイデアが事業化できるのではないかと考え始めた。
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