JRが鉄道事業を維持するために、強化すべき「副業」は何か鉄道会社の苦悩(4/5 ページ)

» 2022年02月25日 08時00分 公開
[小林拓矢ITmedia]

東海道新幹線あってこそのJR東海

 JR東海は、東海道新幹線あってこその鉄道である。20年度の有価証券報告書を見ると、鉄道事業だけで5割を超え、その多くが東海道新幹線によるものだと考えられる。流通業や不動産業も行っているものの、やはり鉄道業とシナジーが生み出せるエリアでしか行っていない。

20年度JR東海セグメント別売上と利益(単位:百万円)
セグメント別売上高

 特徴的なのは、「その他」である。「その他」の中には、鉄道車両製造が含まれている。子会社の日本車輌製造が、JR東海向けの車両を製造し販売することで利益を上げているのだ。

 日本車輌製造は、新幹線では特にJR東海と一体となった車両開発を行っており、海外の高速鉄道車両の受注では他社に負けている現状がある。一方で、在来線車両は細やかな部分の質感が高いという特徴がある。

 JR東日本は総合車両製作所、JR西日本は近畿車輌との関係が深く(ただし、近畿車輌は近鉄グループである)、それらの社に食い込むのは容易ではない。だが近年、鉄道車両業界では標準化が進み、日本車輌製造は新ブランド「N-QUALIS」(エヌクオリス)を開発し、その第1号として315系を登場させた。この標準規格を使用した車両を多くの鉄道事業者に販売していくのではないか、と考えられる。

「N-QUALIS」のブランドで登場した、最初の車両315系(JR東海)

 関東圏でも小田急電鉄、京成電鉄、東京都交通局は日本車輌製造の車両を多く使用している。東京メトロの銀座線や丸ノ内線の車両も、日本車両製造の手によるものだ。私鉄や公営鉄道向けの車両販売を強化しては、と考えるのは自然である。

 JR東海はこれまで、さまざまな副業に挑戦してきたものの、うまくいかなかった経緯がある。その結果として、鉄道事業を中心に経営を展開している。こうした経緯があるので、標準規格「N-QUALIS」をうまくアピールすることができれば、新たな収益源を確保することができるのかもしれない。

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