トヨタが2030年のバッテリーEV(以下BEV)販売目標比率を引き上げたのは、21年12月のバッテリーEV戦略に関する説明会でのことだった。同時に発表された16台もの開発中のEVを見て、驚くと同時に頼もしく感じた方も多かったのではないだろうか。
クルマの未来、取り分け日本の自動車業界の未来を憂いているトヨタの豊田章男社長が、トヨタの底力を見せたのは間違いない。しかし、あれを見て「トヨタもBEVに注力するのか」と思った人は多かったようだ。そう思わせるのが目的だとはいえ、この見方はあまりにも単純すぎるのではないだろうか。
まず第1に、トヨタほどの規模の自動車メーカーであればあれくらいの規模での開発は当然行っているハズで、本来は開発中の車両など一般には公開しないだけのことだ。それを見せたのは、イザとなればこれくらいのBEVは用意できる、という姿勢をアピールしたかっただけだろう。
披露されたBEVの1台1台をつぶさに見ていけば、まだデザインコンセプトから脱却できていないような粗削りのモデルまで含まれている。
欧州自動車メーカーのBEV優位説に躍らされた海外メディアや日本の盲信的環境保護意識のジャーナリズムが、電動化=BEVという思い込みにも近い短絡的思想に陥っていることに、辟易としている自動車業界関係者は多い。その代表がトヨタなのである。
以前からトヨタは全方位で環境問題に対応することを明言し、BEVもその選択肢の一つであったのだから、あの発表も何も不自然なものではなかったのだ。
しかし、販売目標を引き上げたことに注目したり、その比率が欧米メーカーと比べて依然として低いことを指摘するようなレベルの低い見解を見かけた時にはいささかガッカリした。目標などはいくらでも動かせる。それも5年先、10年先の販売目標など絵に描いた餅だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング