クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

スタッドレスタイヤはどうして氷上でもグリップするのか高根英幸 「クルマのミライ」(1/4 ページ)

» 2022年01月04日 07時00分 公開
[高根英幸ITmedia]

 今年の冬も暖冬で大雪という傾向は変わらないようだ。気候変動が影響しているのだから、この状況は当面続くのだろう。日本海側の方々は、雪下ろしや通行の確保など大変だと思う。

 雪道ではスタッドレスタイヤやタイヤチェーンなどの装備が欠かせない。スタッドレスタイヤに履き替えていれば、大抵の氷雪路では問題なく走行できる。

 しかし、そもそもスタッドレスはなぜ氷雪路でも走行できるのか、考えたことがあるだろうか。そこにはタイヤメーカーの開発エンジニアの知見が凝縮されている。スタッド(鋲)がないタイヤなのでスタッドレス、つまりスパイクピンのないスノータイヤというのがスタッドレスタイヤであるが、環境性能を高めるだけでなく、当然ながら冬道でのグリップ力を確保している。

スタッドレスタイヤは数年おきに新作が発表される。タイヤメーカーは常に研究開発を繰り返し、より氷雪性能の向上やドライ路面での快適性、ウエット性能などを高め続けている(写真/横浜ゴム)

 新雪では、タイヤのブロックパターンの間に入った雪が圧縮されて雪柱となり、タイヤと噛み合うことでグリップを発揮する。しかし踏み固められた圧雪や、そこから融雪と結氷を繰り返したガチガチのアイスバーンなどは、タイヤのゴムだけでグリップさせるのはかなり条件が厳しい。

 圧雪路や凍結した路面では、表面の水膜をいかに除去するかが課題だ。水膜がない乾いた氷の状態では、むしろ摩擦係数は高まる。北海道でも都市部ではないより寒い地域の方が、スタッドレスタイヤのグリップ力は高い。

 都市部では、交差点での発進によってスタッドレスにより氷の表面が磨かれてしまうことも問題だ。さらにクルマの放射熱が雪を溶かし再び凍ることで厚い氷の膜となり、時間帯により若干の外気温上昇や、走行時のタイヤの圧力によって表面が溶けて水膜が発生し、タイヤを滑らせるのである。

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