海外では一般的なオークション割当方式だが、やはりメリットとデメリットがある。
オークション方式のメリットは、周波数の価値を行政が見出せない場合でも適切な事業者に周波数を割り当てることができることだ。そして落札者は落札額などの投資を回収する必要性から、 電波を効率的に利用して事業を行うことが期待できる。さらに周波数割当手続きについて透明性が確保されること、審査要件を緩和することで事業者の裁量余地が増えること、などが挙げられる。
一方、デメリットは、落札額の過度な高騰によって事業者が巨額の負債を抱え、インフラ投資の遅れやユーザーへの料金に転嫁される懸念があること、資金力の大きい事業者に周波数が集中する恐れがあること、などがある。実際、欧州では00年代、3Gの電波オークションで落札額が過度に高騰した事例があり、これが事業者の体力を奪い、第3世代携帯電話の導入が大幅に遅れたとする見方がある。
ただし、これらのデメリットは、諸外国が20年以上に渡ってオークション方式を実践する中で対策が講じられてきた。例えば、十分な周波数枠を確保する、獲得できる周波数量の上限を決める「周波数キャップ」を適用するなどの方法で、落札額の過度な高騰を防げるという。また、近年主流になってきているという「組み合わせ時計オークション方式」(需要と供給によって価格を調整する)では高騰しにくい傾向があるという。
では、携帯電話キャリアの電波オークションに関する考えはどうか。
NTTドコモは、「オークションを今後の基本的な割当方式として検討すべき」として賛成の立場だ。業界の中では、ドコモは比較審査方式における不透明性に不満を抱いていると見る向きもある。
ドコモはオークション方式の導入に前向き(「新たな携帯電話用周波数の割当方式に関する検討会」第2回検討会のNTTドコモ提出資料より)
KDDIは、一定条件が付与されるオークション型を採る英国、オークションと比較審査のハイブリッド型を採るフランスの事例を出し、「日本の割当方式の議論の参考になる」として賛成側に近いスタンスだ。
KDDIは、フランス、英国の割当制度が参考になるとし、オークション方式に反対はしていない(「新たな携帯電話用周波数の割当方式に関する検討会」第2回検討会のKDDI提出資料より)
- これが“真の5G”? 携帯電話キャリアが始めた「5G SA」とは
2月21日、KDDIは法人向けに「5G SA」の商用提供を開始したと発表した。「5G SA」の「SA」は「Stand Alone(スタンドアロン)」を意味する。5G SAは、無線通信からコアネットワーク(認証やデータパケットの転送経路の設定、移動制御などの機能を持つ設備)まで、すべての基地局設備が5G専用に開発されたもので提供する。
- 楽天モバイル新料金プラン 金額以外で明らかになったこと
楽天モバイルは、新料金プラン「Rakuten UN-LIMIT VI」を4月1日から提供すると正式に発表した。各社からの報道のとおり、3段階に変動するプランだ。従来は2980円(税抜)で使用量無制限だったが、データ利用量に応じて割安となる。
- モバイル事業でさらに赤字拡大の楽天、収益改善のタイミングはいつか?
携帯電話事業はエリア構築のため先行投資が必要で、事業開始当初、コストがかさんで赤字が続くのは仕方がない。しかし、そろそろ黒字化の見通しも知りたいところだ。三木谷浩史社長や楽天モバイルの山田善久社長は「22年第1四半期を収益のボトムに、22年第2四半期以降は収益の改善を見込む」とした。
- 高速道路の最高速度が120キロなのに、それ以上にクルマのスピードが出る理由
国産車は取り決めで時速180キロでスピードリミッターが働くようになっている。しかし最近引き上げられたとはいえ、それでも日本の高速道路の最高速度は時速120キロが上限だ。どうしてスピードリミッターの作動は180キロなのだろうか? そう思うドライバーは少なくないようだ。
- 幻想の5G 技術面から見る課題と可能性
夢のように語られる5G。課題としていわれるのは、エリア展開の遅さと料金面についてが多い。しかし、5Gを技術面から見た場合はどうか。「4Gと何が違うのか。本当の意味で違うのは、ミリ波帯域が併用になってきたとき。現状、3Gから4Gになったときのような感動は、あまり得られないだろう」と、無線通信技術の専門家、ピコセラの古川浩社長は話す。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.