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TOTO USA副社長に聞く ウォシュレットの販売台数を倍増させた秘密赴任当時トイレの話はタブーだった(2/5 ページ)

» 2022年03月23日 08時00分 公開
[中西享ITmedia]

大掛かりなテレビCMは打たない

――コロナ禍が販売増を後押しした面もあるようですが。

 米国でコロナ禍が厳しくなった20年3月にトイレットペーパーが街の棚から消えるという事態が起きました。ニューヨークタイムズなどのメディアが米国で言うところの「ビデシート(温水洗浄便座)がトイレットペーパーの代わりになるよ」というような取り上げ方をしました。

 認知度が上がる中で、こうしたメディアの記事も加わり、さらにアマゾンなどのサイトレビューを使った人が口コミで発信してくれることで、ウォシュレットの良さが広がっていきました。昔、口コミは友達の井戸端会議の話題にすぎなかったですが、いまではSNSなどを通じて多くの人の口コミを気軽に発信し、情報を得られるような環境になりました。そのような背景から一気に温水洗浄便座のマーケットが大きくなったとみています。

 また著名人がウォシュレットを使ってみて良かった、という口コミを言ってくれたとか言っていないとか?……そういう話はいくつも聞いています。

――地域的には米国のどこで良く売れているのでしょうか。個人住宅で売れ出したということですか。

 多くの日系企業と同じで、最初に西海岸で商売を始めて、そのあと東海岸、さらに南部に広げました。西部は日本に近いので受け入れ感が強いです。西部と東部が大きなマーケットで、いまは南部も伸びてきています。南部というと保守的なイメージがあるかもしれませんが、テキサスのような大都市では伸びています。

 一番売れているのは一般住宅です。バスルームはプライベートな空間でウォシュレットもそういう分類の商品です。従って一般住宅向けに売れている、とみています。また、体験してもらう機会を増やすためにホテルにはスイートルームに戦略的に納入するなどしてきました。今ホテルの現場でもスイートから他の客室へ採用が広がってきています。

――米国市場で販売を増やすための特別なキャンペーンはしたのでしょうか。

 市場規模がまだ小さいので、大掛かりなテレビCMを打つようなことはしていません。メインは口コミで体験機会の創出です。

 十数年前に、ブロードウエイのビルボードに広告を出したことがあります。しかしビジュアルではウォシュレットの良さを伝えにくく、体験機会の創出、口コミに注力してきました。商品を買う時にアマゾンサイトの有名人のレビューを見るのが当たり前になってきたことで、口コミを重視してきた当社にとってはマーケティングがやりやすくなったと思います。

写真提供:ゲッティイメージズ

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