「おしりだって洗ってほしい」
1982年に女優の戸川純氏が出演したTOTO・ウォシュレット®のCMのキャッチコピーだ。「コピーライターの神様」と呼ばれる仲畑貴志氏が手掛け、当時、大変な話題になった。日本で放映されてから40年がたつ。
日本では温水洗浄便座がほぼ定着したといえる一方、海外での販売は生活習慣の違いなどもあり、苦戦を強いられてきた。特に米国市場では販売を伸ばすのに苦労してきた歴史がある。だが、その温水洗浄便座の売上高が、2019年あたりから大幅に伸びてきているのだ。
コロナ禍という特殊事情で注目された面もあるものの、好調の裏にはTOTOの知られざる地道な努力があった。販売の最前線に立ってきたTOTO U.S.A., INC.の野嶋克仁副社長に、売れ出した要因と今後の展望を聞いた。
――TOTOの温水洗浄便座、ウォシュレットが売れ出したのは、何が最大の要因だと思いますか。
1989年、米国進出時からウォシュレットを販売してきました。この商品を使ってみて快適だというのは分かっていましたので、その良さをいかに伝えるか30年以上も地道にプロモーションをしてきたのがベースにあります。
私は98年に米国に赴任しましたが、当時はトイレの話はタブーだったため、なかなかウォシュレットのセールストークをできませんでした。
日本を含めたアジアに旅行した経験のある人はウォシュレットの良さは知っていました。一方、米国のほとんどの方はその存在すら知りませんでした。そこで「体験してもらうしかない」と思いました。
米国では住宅の改築などをする時にお客さまに来てもらう「キッチン&バス」チャネルという販売ルートがあり、各社とも小さいショールームを持っていて、ウォシュレットを展示していました。まずはこのショールームのセールスマンに使ってもらい、来店したお客さまにも試してもらいました。
その結果、コロナ禍の前の2019年には前年比で25%も増加してきており、今後の伸びを確信しました。認知度が上がってきた局面で、アマゾンなどのEコマースが業態として急激に伸びました。その時に、販売チャネルとして地道に準備して、欲しいと思ったお客さまがすぐ買える状態にしました。実際に販売した後の返品が圧倒的に少なかったことも、お客さまに受けているからだと思いました。
――1月に発表した第3四半期決算数字を見ても、米国での販売は好調が続いています。
1〜9月累計で比較すると、20年度第3四半期の決算数字は19年度よりウォシュレット販売台数が90%も増加、21年度の同四半期で見ても19年度より2.25倍伸びています。一時的なブームで終わらずに、伸びのペースが落ちていません。この数字には大きな手応えを感じています。
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