ウクライナ侵攻の裏で何が? イーロン・マスクの“技術”が生命線に世界を読み解くニュース・サロン(5/5 ページ)

» 2022年03月24日 09時00分 公開
[山田敏弘ITmedia]
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中国の動きは

 世界に目を向けると、中国は今、巨大経済圏構想「一帯一路」や「デジタルシルクロード」で、「中国製造2025」や「中国標準2035」(中国の規格を世界に広める政策)の政策にからめて、中国製通信機器の設置拡大を狙ってきた。それによって、中国を中心にしたデータ主導権の獲得を狙っている。

 それには光ファイバーケーブルの設置計画なども含まれるのだが、スターリンクのような衛星のインターネット通信がどんどん広がれば、中国に依存しなくてもいい国や地域が出てくるだろう。そうすれば、中国の思惑通りに事が進まなくなることも考えられる。

 米国がそれを考慮していないはずはない。

スターリンクは世界の情勢に大きな影響を与えるか(画像はイメージ)

 今回のウクライナ侵攻では、スターリンク以外にもいくつかのテクノロジーが活用されている。例えば、米エアビーアンドビーなどの民泊仲介サービスは、そのプラットフォームでウクライナを逃れた難民たちに無料で滞在先を提供している。

 ウクライナ政府は、「ロシア兵を倒す」ためにビットコインなど暗号通貨を使った寄付を求めている。ロシア国内の反体制派を援助するためにそうしたデジタル通貨などが使われている。

 ウクライナ侵攻の裏では、こうしたさまざまなテクノロジーを使った試みが実施されているのである。紛争時にも力を発揮するテクノロジーの可能性についても、引き続き注目しておきたい。

筆者プロフィール:

山田敏弘

 ジャーナリスト、研究者。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフェローを経てフリーに。

 国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『死体格差 異状死17万人の衝撃』(新潮社)、『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)がある。

Twitter: @yamadajour、公式YouTube「SPYチャンネル


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