コロナ禍によって自宅で過ごす時間が増えたことで、より身近なものになったサブスクリプション(定額制、以下サブスク)のサービス。Netflixなどの動画配信サービスやSpotifyなどの音楽配信サービスが代表例となる中、日本のお菓子や雑貨を届ける海外向けサービスが外国人の大きな注目を集めている。
ICHIGO(東京都港区)が手掛けるサービスは後発ながら、日本人ならではの丁寧なサービス内容が海外の日本ファンを中心に評判となり、先行して参入した海外企業に代わり、世界シェアトップクラスの地位を獲得している。
後発企業がいかにして今の地位を得るに至ったのか。そのカラクリと、創業秘話などを同社の近本あゆみ社長に聞いた。
AmazonやNetflixなどのサブスクリプションサービスは消費者の生活を大きく変えた。現状は、サブスク企業の勢力図は固まりつつある。しかしそんな中でもサブスクサービスに乗り出す「後発企業」もある。すでにできあがっている構図に、いかにして分け入ろうとしているのか。その戦略に迫り、後発サブスク企業の生き残り戦略を分析する。
同社は2015年に創業。リクルート出身の近本社長がインドネシア人男性と2人で立ち上げ、サービス開始から7年目を迎えた。社名は創業年と四字熟語の「一期一会」に由来し、年商は40億円を誇る。
従業員数はアルバイト・派遣社員を含めて約80人(22年3月時点、以下同)で、そのうち約7割に当たる50人が外国籍だ。従業員の出身国は計12カ国、国籍別では米国、フィリピン、インドネシアが多く、この3カ国で20人程度いるという。
現在手掛けるのは計6サービスで、うち4サービスがサブスクだ。主力事業の「TOKYO TREAT」(月額3400円)では、大手菓子メーカーの商品を中心に、日本のお菓子やソフトドリンク計15〜20品を専用の箱に詰め、日本から月に1度、海外に航空便で発送する。
他にも伝統的な和菓子を扱う「SAKURACO」、キャラクター雑貨を扱う「YumeTwins」、日韓コスメの「NOMAKENOLIFE」もサブスクとして展開している他、オンラインクレーンゲーム「TOKYO CATCH」、各サービスで扱う商品を購入可能なECサイト「JAPAN HAUL」も手掛けている。
サブスクサービスではこれまで180の国と地域に、累計210万箱を発送した。発送したお菓子の総数は3000万個にも及ぶ。東洋経済の記事によると、競合の米Bokksu(ボックス)の累計販売数は100万箱だという。ICHIGOも自社で独自調査を実施しており、それによると自社の販売数がBokksuを上回っていることを確認しているという。このため近本社長は「(ICHIGOのサービスが)世界シェア1位ではないか」との見解を示している。
アクティブユーザー数は「非開示」としているが、会員数は無料会員も含めると180万人を誇る。ユーザーの6〜7割が米国のユーザーで、英国、豪州、カナダも含めた4カ国で、ユーザー全体の9割程度を占めるといい、残りがアジア、アフリカ、中東圏。男女比では8割が女性で、20〜40代の利用が目立つという。
ユーザーからは「自分たちの国では購入できないレアな商品が入手できる」と好評だ。一般ユーザーだけでなく、コロナ禍でインバウンド収入が激減した地方の菓子メーカーにとっても、同社のサービスは貴重な収入源になっている。
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