サービス開始からわずか数年で、業界シェアでトップクラスになった同社。その要因を聞くと「細かい、地味なことをサボらずに真面目にコツコツやってきた。これに尽きる」(近本社長)と意外な答えが返ってきた。詳しく話を聞くと、徹底した内製化の産物が要因だと分かった。
例えば、EC事業者の場合、梱包や発送までの工程を外部に委託するケースが多い。これに対し、同社は東京都大田区内に専用倉庫を借り、自社開発のシステムで受注から梱包・発送までを自社で手掛ける。コスト削減につながる上、ユーザーの急な注文変更や発送中のトラブルにも臨機応変に対応できるという。
サービス開始時には、同様のサービスを始めていた海外企業が既に存在した。このため、同社は後発企業として競合のサービス内容を徹底的に研究。自社の日本人バイヤー自らが仕入れるスタイルを確立した。
近本社長によると、当時の業界シェア1位の企業は、仕入れの際、お菓子問屋に予算を渡し、日本の商品を入れてもらうスタイルだったという。「そういうスタイルもいいと思うが、それでは問屋が売りたいもの、取り扱いが多いもの、在庫が多いものなど問屋の都合に合わせた商品提供になってしまうことも少なくない」と近本社長。日本の国内事情に精通した日本人バイヤーと外国人マーケターのコンビで、期間限定や地域限定の商品も積極的に扱うなど飽きさせない工夫も施し、会員の離脱を防いでいる。
最近はメーカー側と交渉して、発売前の商品を取り扱うこともあるという。
YouTubeやSNSを使ったマーケティング手法の存在も欠かせない。中でもYouTuberとのコラボは、創業当初から積極的に取り組んだ。15年当時、米国では「Unboxing」(開封)というジャンルが流行しており、あるYouTuberが自身で購入した、同社のサブスクボックスを紹介したところ、ユーザー数が増加した。
今でこそ、YouTuberを商品PRに活用する手法は増えたが、当時は珍しく、企業案件1件当たりの相場も安価(5〜10分の動画1本で10万〜30万円)だったこともあり、積極的に活用した。現在は30秒で数百万円かかるケースもあるなど案件価格が高騰している。
「(PRに効果的とされる)登録者数50万人以上、日本文化を英語で紹介しているという条件を満たすYouTuberは限られる。今は他社と案件の取り合いになっているが、YouTuberの配信動画の影響で注文が増えるということを初期に経験できたのは大きかった。そこからYouTuberとのコラボを強化していった」(近本社長)
自社のSNSアカウントを使ったマーケティングにも注力した。サービス開始前に日本のお菓子メーカーの投稿を見ていると「日本語でしか情報発信していないケースも少なくなかった」(近本社長)という。「これでは外国人に全く良さが伝わらない」。そう考えた近本社長はサービス開始後、Instagramを中心に自社アカウントの運営に注力した。
欧米人の閲覧回数が多い時間を算出し、投稿時間や1日の投稿回数を決めた。SNSの運用マニュアルも作成し、社員への浸透を図った結果、自社アカウントの総フォロワー数は約150万に達した。
「実店舗がないのでSNSを使うしかなかった。マニュアル化などは意外とやらない企業が多い。すごく奇抜なことはできない会社だが、とにかくオペレーション化して、やり続けるのは得意」(近本社長)
こうした地道なことを継続した結果、後発サービスながら、カスタマーサポート、梱包の丁寧さ、商品内容などが評判となり、徐々に競合サービスからユーザーが移行したという。コロナ禍を追い風に、現在もシェア・売り上げともに増加中だ。
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