「セコマ」6年連続で顧客満足度1位のなぜ 大手がやらない“非効率の極み”経営本州にも店舗がある(4/4 ページ)

» 2022年03月29日 05時00分 公開
[岩崎剛幸ITmedia]
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非効率だが価値のある店内調理事業

 セイコーマートを語る際に欠かせないコンテンツが「ホットシェフ事業」です。これがあるからセイコーマートに行くという人もいるほどです。ここで提供される総菜や弁当など、店内の厨房で作られるあたたかい食事が、熱烈なセコマファンを作る一大要素となっています。

熱烈に支持される店内調理

 筆者のクライアントの事務所が茨城にあります。その事務所から徒歩5分の場所にセブン、車で10分の場所にセイコーマートがあります。お弁当を買いに行く際、クライアント企業の人たちは迷わずセイコーマートに行くと言っていました。その一番の理由がこのホットシェフのお弁当です。特に、200円以上する大きなおにぎりや、510円のカツ丼が定番の人気商品です。

かつ丼が人気商品

 北海道では人口1000人程度の町にも出店するほど、過疎化が進んだ町のインフラとしての機能も持つセイコーマート。町には食堂が一軒もないというケースもあります。そのような町であたたかいお弁当や110円総菜がどれほど価値のある商品になっているかは想像に難くありません。

 店内に厨房を作るので投資資金が必要です。厨房スペース分だけ売り場が減ります。人手も手間もかかります。当然、時間がかかる場合もあるでしょう。店内調理の価値は認めつつも大手コンビニが長くこの事業をやってこなかったのは、利便性、効率性、スピードが売りのコンビニにとって非効率の極みだったからです。

 しかし、北海道に根を張るセイコーマートは、「だからこそ必要」だと感じたわけです。

 食堂もスーパーもない。あるいは行くのに時間がかかり、高齢者にとってはないに等しい状況の地域もあります。セイコーマートというコンビニは、それらの代替機能を持ち合わせています。コンビニでありながら、スーパーでもあり食堂でもあり、待ち合わせ場所、集いの場にもなっています。まさに町のコミュニティーです。

 一見、非効率とも思える店内調理ですが、1994年にスタートした同事業はすでに800店舗以上にまで広がり、ローソンなど大手コンビニでも調理に注力するところがてできました。

 セイコーマートは品ぞろえやサービスなどの面で、出店商圏の顧客にとって何が必要なのかを考えて店づくりを進めてきたことが分かります。これが結果的に顧客満足度の高い店をつくり上げることにつながったのです。

10キロの米をコンビニで販売するのは珍しい

 セコマはすでに小売業の枠を大きく超えて、原料生産・製造、物流・サービス、そしてセイコーマートという小売りまでを持つ一貫したサプライチェーンをつくり上げています。

 同社社長は「卸から生まれた企業というDNAをもとに、他にない特徴のある商品をどれだけ品ぞろえできるかという考え方が根本にある」と語っています。

 「コンビニはどこも同じ」という定説を覆し、セコマならでは、そして地域特性を生かした品ぞろえを徹底する姿勢に、大手ではない企業の戦略の要諦を見ました。そして、低成長時代を生き抜くヒントもあります。

 小は大と同じことをやってはだめです。小は大のやらないことをやり、大のやっていることはやらないことが鉄則なのです。

著者プロフィール

岩崎 剛幸(いわさき たけゆき)

ムガマエ株式会社 代表取締役社長/経営コンサルタント

 1969年、静岡市生まれ。船井総合研究所にて28年間、上席コンサルタントとして従事したのち、同社創業。流通小売・サービス業界のコンサルティングのスペシャリスト。「面白い会社をつくる」をコンセプトに各業界でNo.1の成長率を誇る新業態店や専門店を数多く輩出させている。街歩きと店舗視察による消費トレンド分析と予測に定評があり、最近ではテレビ、ラジオ、新聞、雑誌でのコメンテーターとしての出演も数多い。

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