「結婚したら“女性”の労働時間は短くしよう」「出産後の“女性”は休みが取りやすいようにしよう」といった具合に、女性にだけ配慮する職場であれば、当然ながら男性より女性の方が育休を取得しやすくなります。それは一見、女性活躍推進に見えますが、大きな勘違いです。結婚や出産後に仕事と家庭の両立を図らなければならないのは、男性ではなく女性だと決めつけたエセ女性活躍推進です。
これら私生活面と職場環境面の理由が相まって、女性の育休取得率は8割を超える水準へと到達しました。かつては女性の育休取得も難しかったことを考えると、それは会社が積み重ねてきた努力の結果でもあります。しかしながら、育休取得促進策が女性にばかり偏ってきたために、男性育休取得が進まない状況を招く原因になってしまっています。
今、女性の方が圧倒的に育休を取得しやすい状況なのは、社会全体が、育休取得は女性がするものだと思い込む、アンコンシャス・バイアス(unconscious bias:無意識の偏見)に侵されているということです。そのため男性が育休を取得しようと会社に申し出ると、
「男のクセに育休なんか取るのか?」
「あれ、奥さんは育休取らないの?」
「将来を考えたら、やめた方がいい」
などと上司からいわれてしまうのです。このような認識に支配されたまま男性が育休を取得すると、会社ではマミートラックならぬ「パピートラック」に陥ることになります。男性にも育休の取得を促進しようという段になって、あらためて女性の育休取得率向上に寄与してきたマミートラックというシステムがまやかしであり、ネックだとあらわになっているのです。
現在、多くの会社に、女性を「育休要員」として育てる暗黙の前提があり、結婚や出産に際して女性だけに配慮しようとするエセ女性活躍推進の風潮が見られます。そのような状態のままで男性の育休取得を促進しても、取得することはないだろうと“期待”されている男性社員は、育休取得時に裏切り者のように扱われてしまいかねません。
一方、生活周りにおいては、今度は女性の方が、
「女性なのに、旦那さんに育児させるなんて」
「お母さんが子どものそばにいてあげないのはかわいそう」
「今どきの女性は1人で育児もできないのか」
などと、周囲から後ろ指をさされてしまうこともあり得ます。男性が会社から裏切り者扱いされてもくじけず育休を取得したところで、現状のままでは、女性は女性で肩身の狭い思いをする可能性があるのです。
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