会社側は裁判で「外資系企業は終身雇用を想定していない」とした上で「ポジションごとに人材を採用し、一方的な配転はしない」「会社に貢献できない場合に退職を求められるのは、外資系金融機関では常識」「日本の判例で男性の解雇が無効とされれば、国際企業は日本から撤退する」などと主張。日本企業における整理解雇の有効性を判断する要件には当てはまらないと訴えていた。
しかし判決では「外資系金融機関の雇用慣行と解雇要件に対する考慮は矛盾しない」とし、男性の解雇には合理的理由はなく「解雇権の濫用」との結論になったものである。
東京地裁では、前ページに列挙した整理解雇の4要件に照らし合わせて、本件が解雇無効である判断基準を次の通りに示している。
直近1〜2年の間、グループの従業員や賞与総額、役員報酬は増えており、男性の管轄部門も前年を超える収益を上げていたので、解雇の必要性は認められないと判断。
配置転換の検討のみで、降格や賃金減額などを検討していないことから、十分ではないと判断。
男性以外の従業員に希望退職を募ったり配置転換を命じたりしておらず、解雇対象者の選択に合理的基準があったとは認めがたいと判断。
男性は勤務評価書で勤務成績・態度の不良は指摘されておらず、一貫して賞与が支給されており、会社側が主張する「勤務成績・態度」も解雇の理由にならないと判断。
これらの判断により、男性の解雇は客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当とは認められず、無効と結論付けられている。この判決は、たとえ外資系企業であっても、また年収数千万円を超えるような高給が支払われていたとしても、恣意的な解雇が許されないことを明確に示した意義あるものといえるだろう。
俗に「外資系企業はあっさりクビになる」という文脈における「クビ」と、今般のバークレイズ証券で争われた「クビ」は、実は大きく異なる。法的に見ると、前者は「退職勧奨」、後者は「退職勧奨拒否後の整理解雇」であり、そもそもの前提として前者は「合法」、後者は「違法性が疑われる」という違いがある。
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