1月10日、日立製作所が「ジョブ型雇用」の適用を全社員に広げる旨の報道がなされた。年功序列や順送り人事の壁を取り払い、必要な人材を社外から機動的に募ることが目的だという。このニュースを受け、世間では「年功色の強い従来の制度を脱し、変化への適応力を高めるべきだ」とジョブ型を積極推進する声や、一方で「雇用の安定性は担保できるのか」のような不安視など、さまざまな意見が出されている。
日立の連結従業員約37万人のうち、海外で働くおよそ21万人の大半は既にジョブ型で働いており、国内では2021年度に管理職へ先行導入。今回の導入規模拡大により、日立本体の社員が全面的にジョブ型適用となる。その他、国内大手企業では、富士通やNTTなども既に管理職がジョブ型適用となっており、今後一般社員へも拡大していく予定だ。またKDDIやNECは、新卒採用時点からジョブ型で採用し、ポジションに応じた報酬で処遇する方針を打ち出している。
「年齢や社歴などに関わらず、職務に最適な人を配置でき、適所適材が進む」
「需要が大きく高度な職務ほど賃金も高くなり、労働力の流動化が加速する」
「社員が自律的にスキルアップに励み、生産性向上も期待できる」
ジョブ型雇用に関しては、このような前向きで明るい未来像が語られることが多いが、実態はどうなのか。なぜ、ここに来てわが国の大企業が軒並み導入を急ぎ、対象者を拡大しつつあるのか。前編と後編に分け、解説していこう。前編となる本記事では、ジョブ型雇用にまつわるよくある誤解を解いていく。
ジョブ型というワードは特段目新しい概念ではなく、各国の雇用システムを分類するための用語として以前から存在するものだ。対比される言葉として、わが国で主に見られる「メンバーシップ型」があるが、どちらがよい/悪いといった類のものではなく、時代や景況感によってフィットしている/していない程度の差異と考えればよいだろう。
ジョブ型とメンバーシップ型の雇用システムの違いは、一言で表現すれば「人と仕事との当てはめ方の違い」と表すことができる。いわばジョブ型は「仕事に人を当てはめる」、メンバーシップ型は「人に仕事を当てはめる」やり方なのだ。ちなみに国際標準なのはジョブ型であり、メンバーシップ型のシステムになっているのはほぼ日本だけである。
ジョブ型とメンバーシップ型、それぞれの基本的な概念が大きく違うにもかかわらず、「グローバルスタンダードだから」といってジョブ型の施策を無理やり入れ込もうとすると、間違いなく齟齬(そご)が起きることになる。「採用」「異動」「解雇」といったテーマごとに具体的に見てみよう。
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