世界中を危機に陥れたコロナ禍の発生によって、日本でも求人数が大きく減少しました。しかし、2020年6月に底を打ってから、求人数は緩やかな回復基調にあります。厚生労働省が公表している一般職業紹介状況を基に、推移をグラフにしてみると次のようになります。求人数は着実に増えてきてはいるものの、コロナ禍前の水準には戻っていません。ただ、今後経済が回復するに従い、求人数も増加していくと考えられます。
一方、日本の人口は減少の一途をたどっています。求人数が増え、求職者の母数は減少していくとなれば、22年以降の労働市場は採用する会社側にとって厳しく、求職者側にとってはチャンスが広がることになります。
会社としては、これまで通りに採用できる状態を維持したい場合、求職者を今以上に引きつける工夫をしなければなりません。例えば給与水準を上げたり、休暇を増やしたり、テレワーク推進やスーパーフレックス導入など働き方を柔軟にしたり、教育研修制度を充実させるなどです。
また、採用基準を見直して間口を広げることも必要です。学歴や職務経験などの条件を見直したり、シニア層や主婦層、外国人、障がい者など、就業条件に制約がある人材層からも積極的に戦力化を進めたりと、間口を広げられる余地はまだまだ多くの会社の中に眠っているはずです。
そのように、シビアな採用市場の到来が予測され会社側に工夫改善が求められる中、時事通信が21年12月26日に「日大に『縁故採用』規定 職員応募、学長・監督の推薦必須―田中体制で強化」と題する記事を報じました。
記事では、日本大学の「令和4年度大卒職員(一般職)採用選考試験実施要項」に書かれている応募資格の内容を紹介しています。具体的には、次の3つです。
(1)大学の長等(他大学の長も含む)により推薦された者
(2)日大競技部に所属し、優秀な競技歴を有し、かつ将来競技部の監督・コーチの後継者となることについて期待し得る者
(3)日大任期制職員(一般職)にある者で、所属部科校長等により推薦された者
(2)は各競技部の部長および監督の推薦が必要とのことなので、(1)〜(3)のどのパターンでも、採用選考に応募するには関係者の推薦が必須ということになります。これは縁故採用といわれる手法の一種ですが、応募資格を見る限りとても閉鎖的です。今後シビアな採用市場を迎え撃つに際し、この手法のままでは心もとないように思えます。
また、日本大学は前理事長の脱税や前理事の背任行為などの不祥事が立て続けに明るみとなり、新体制下で組織の立て直しを図っている最中です。不祥事を生んだ旧体制の組織体質と、縁故採用は無関係ではないようにも感じます。そこで、縁故採用の功罪について考察してみたいと思います。
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