初めての土地に旅行して、「うちの町と同じ風景だな」と感じたことはないでしょうか。いまや日本全国どこに行っても、商店はコンビニエンスストア、飲食店はチェーン店、家電は量販店です。理髪店もチェーン化してきました。スナックに至っては、何に変わったというわけではなく、同じものを提供する業態が少なくなってしまいました。その結果、地方の個性というものが急速に希薄化しています。
非正規労働者が増えているといわれていますが、地方色の衰退と関係があると筆者は考えています。就業者に占める非正規労働者の割合は確かに増えていますが、それは正社員が減っているからではありません。自営業が減っているからです。
過去、日本の地方都市にそれぞれの個性があったのは、自営業が盛んだったからではないでしょうか。ラーメン店や居酒屋はほとんどが自営業であり、「○○ラーメン」「○○焼き」「○○丼」といったご当地グルメが各地にあり、個性を演出していました。それらが希薄になり、全国展開のチェーン店が席巻して、自分がどこにいるのか分からない風景になってしまいました。
図1は総務省統計局の『労働力調査』にみる、就業形態別の就業者の割合です。正社員が減っているという通念に反して、正規の職員・従業員の割合は過去19年間ほぼ一定です。役員の割合もやはり一定です。自営業の割合が減った分だけ非正規の職員・従業員の割合が増えています。
正社員の構成比は若干下がっていますが、実数はむしろ増えています。図2は総務省統計局の「労働力調査」による「正規の職員・従業員」の実数の推移です。確かに一時減っていたものの、近年は上昇に転じ、2000年代初頭より増えています。
「寄与度」という指標があります。全体の増減に、その内訳の増減がどれだけ貢献したかを測る指標です。「(当期実数−前期実数)÷前期合計」という式で算出します。例えば、正規の職員・従業員は02年が3489万人、19年が3555万人、合計就業者数は02年が6319万人です。02年から19年までの間の、正規の職員・従業員の、合計就業者の増減に対する寄与度は(3555−3489)÷6319=1.0%です。
寄与度をグラフ化したものが図3です。やはり自営業者が大きくマイナスの寄与をしています。正規の職員・従業員はむしろプラスの寄与をしています。
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