より多くの企業がバーチャルのみの株主総会に移行しようとする中、株主にとって重要なことの1つは、経営者が対面の株主総会を廃止する状況を明示しているかどうかです。
日本の企業は現在、定款を変更することなく、一時的な規制緩和を利用して2年間に限りバーチャルでの株主総会の開催が認められています。しかし、さらに長期間にわたる導入を目指す企業もあり、投資家が反対するケースも見られます。2月には、あるフィンテックの新興企業が株主との事前協議なしに恒久的なバーチャル株主総会への移行を提案しました。それに対し、私たちは反対票を投じました。
私たちの経験では、経営者が自発的にバーチャル株主総会の常態化に制限を設ける、あるいはそうした姿勢を見せるだけで、投資家の支持を得ることができます。
例えば、スキルシェアサービスを展開するココナラというテクノロジー企業は、投資家のエンゲージメントに応え、バーチャル株主総会の開催を物理的な開催が困難な場合に制限するという声明を発表しました。武田薬品工業は2021年6月に定款を変更し、自然災害や病気の蔓延などで対面が難しい場合に限りバーチャル株主総会の開催をすると明記しました。こうした企業の取り組みに対し、投資家は賛同しました。
今後数カ月の間に、企業はバーチャル株主総会をいつまで維持するべきか、今後も続けるべきかを判断することになるでしょう。この問題への取り組み方と、その過程における投資家への説明責任は、ポストコロナ時代に向かう投資家にとって、根本的に重要な問題であると考えています。
フィデリティ投信 ヘッド・オブ・エンゲージメント兼ポートフォリオ・マネージャー
投資する企業や将来の投資先企業のサステナビリティー課題解決に向けた対話(エンゲージメント)を通じ、企業価値向上に貢献できるよう活動しています。
また、ESGインテグレーションを推進する観点から、ポートフォリオ・マネージャーも兼務。
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