どうなる裁量労働制──本来の裁量がない、過労自殺などの事例もこれからの「労働時間」(2/4 ページ)

» 2022年04月19日 06時00分 公開
[溝上憲文ITmedia]

2.みなし労働時間制

 変形労働時間制やフレックスタイムより、労働時間規制が緩い仕組みが、みなし労働時間制だ。これには「事業場外みなし制」と、前述した企画型と専門型の裁量労働制の3つの制度がある

 事業場外みなし制は、その名の通り、職場外で働く人が労働時間の計算が難しい場合に、所定労働時間を働いたものとみなす制度だ。

 裁量労働制は実際の労働時間が9時間や10時間であっても、会社がみなした労働時間が8時間であれば、割増賃金(残業代)を支払わなくてもよいとする制度だ(ただし深夜労働や法定休日労働は残業代を支払う)。

 例えば、みなし労働時間を9時間とした場合、法定労働時間の8時間を超えているので1時間分の割増賃金を織り込んだ手当をつける必要がある。実際には特別手当、裁量労働手当などの名目で支払われている。

 ただし、どんな社員でも適用されるわけではなく、専門型は新商品や新技術の研究開発、人文科学や自然科学の研究、情報処理システムの設計、新聞記者など19業務が指定されている。

 一方、企画型は企画部門で経営環境を調査分析し、経営計画を策定する業務、企業の財務部門で財務状態などを調査・分析し、財務計画を策定する業務などに限定されている。

裁量労働制の実態は?

裁量労働制の実態は?(画像はイメージ、提供:ゲッティイメージズ)

 裁量労働制は本来、原則として労働時間規制の縛りがなく、出・退勤も自由であり、上司から頻繁に指示を受ける必要なく、それこそ自己裁量で仕事ができる制度として導入された。フレックスタイムは法定労働時間の縛りがあるが、さらに自由度が高い働き方といえる。

 ところが、長時間労働をさせたり、裁量性がない働き方を強いるなど、過去には制度を悪用する企業もあり、紆余曲折を経てきた。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.