どうなる裁量労働制──本来の裁量がない、過労自殺などの事例もこれからの「労働時間」(3/4 ページ)

» 2022年04月19日 06時00分 公開
[溝上憲文ITmedia]

「本来の裁量がない」のに裁量労働制?

 労働政策研究・研修機構が厚労省の要請で調査した「裁量労働制等の労働時間制度に関する調査結果(労働者調査結果)」(2014年6月30日)では、専門型、企画型、「通常の労働時間制」の3つに分けて1カ月の実労働時間を調べている。

 それによると通常の労働時間制の社員は1カ月の労働時間150時間以上200時間未満が61.7%。専門の社員は42.1%、企画の社員は49.8%になっているが、200時間以上250時間未満は、専門が40.9%、企画が38.6%であるのに対し、通常の社員は26.5%になっていた。

 また、日々の出退勤を見ると、「一律の出退勤時刻がある」通常の社員は91.6%。これは当然だろう。だが、本来出退勤が自由であるはずの裁量労働制対象者の専門が42.6%、企画の49.0%が一律の出退勤時刻があると言っている。また、企画・専門型の社員の40%超の社員が遅刻した場合は「上司に口頭で注意される」と答えているのだ。つまり調査では、「本来の裁量性がない人」が多くいた

「本来の裁量がない」のに裁量労働制、という人も(画像はイメージ、提供:ゲッティイメージズ)

 実は政府は18年に働き方改革の一環として企画型裁量労働制の適用業務に新たに営業職などの業務を追加し、社内手続きを緩和する法案提出を準備していた。

 政府は当初、法的根拠となる厚生労働省の調査として、裁量労働制で働く人の労働時間の長さは、平均的な一般的労働者より短いとしていた。ところが、その元となる調査自体が客観性を欠く不適切なデータであることか判明し、国会提出が見送られた経緯がある。

 また、その前年には大手不動産会社が社員に対して裁量労働制の違法適用したことで東京労働局が特別指導していたことが判明。そのきっかけは、同社の50代の社員が過労自殺して労災認定を受けたことであると、後に分かった。さら裁量労働制の適用に関して17年に全国の272の事業所で是正勧告や指導を受けていた事実も明らかにされた。

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