各種調査を見ると、男性が育児休業を取得しない理由として、業務の都合や職場の雰囲気といったものが挙げられています。
そのため、業務の時間を調整しやすい制度の導入や、育児休業を取得しやすい職場環境などの整備などが有効であるとされています。
実際に育児休業を取得した男性の多くは子の出生直後の時期に取得しており、「出産後の妻が心身の回復が必要な時期にそばにいたい」「育児に最初からかかわりたい」といったことからこの時期の取得ニーズが高いことがうかがえます。
父親にとって育児の入口となる子の出生直後の時期の休業の取得を、現行の育児休業よりも柔軟で取得しやすい枠組みを設けることで、男性の育児休業取得を促進することが期待できます。
また、育児休業などに関して個別の働きかけなどの取組みがある場合は、そうでない場合に比べて取得した割合が高くなる一方で、男性では6割以上が「企業からの働きかけがなかった」と回答している調査結果もあり、育児休業を取得しやすい環境を整備するためには、事業主による労働者への個別の働きかけや職場環境の整備を進めることが必要です。
また、子の出生直後の短期間の休業のみでなく、その後の夫婦交代などでのまとまった期間の休業の取得も念頭に置けば、育児休業を分割して取得できるようにすることが必要であり、これらに加えて、企業が積極的な取組みを進めていくという社会的な機運を醸成するため、育児休業の取得率の公表を促すことで、男性の育児休業取得を促進することが期待できます。
以下では、筆者が対応した改正に関する相談のなかで、実務上の関心が高いと思われる点について解説します。
雇用環境の整備措置は、男女問わず対象とする必要があり、育児期の従業員がおらず、採用する予定もない場合でも整備をする必要があります(図表2)。
雇用環境の整備は、(1)研修、(2)相談体制の整備、(3)自社の育休取得事例の提供、(4)制度と育休取得促進に関する方針の周知、のいずれかを実施することが必要です。
指針(2009年厚生労働省告示509号)では、可能な限り複数の措置を行うことが望ましいとされています。
従業員のワークライフバランス支援の観点からも、措置を1つに限定せず、育児休業制度を横断的に整備し、子育て世代の仕事と育児の両立を会社全体で支援する姿勢を示すことが重要です。
育児期の従業員のワークライフコンフリクトを少なくし、育児と仕事の両立が可能となることで従業員のエンゲージメントを高める効果が期待できます。
エンゲージメントの向上については、労働生産性を高める効果があることも各種調査から分かってきています。
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