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タブー視されがちな「解雇無効時の金銭解決ルール」 働き手にとってもメリットがありそうなワケ厚労省でも検討開始(3/4 ページ)

» 2022年04月27日 05時00分 公開
[川上敬太郎ITmedia]

(1)Bタイプ社員が活躍できる職務を見つけてコンバートし、Aタイプ社員への転換を図る

(2)Bタイプ社員を戦力外と見なしたまま賃金を低く抑え、コストを最小限に留める

(3)冷遇して圧力をかけてDタイプ社員へと転換させ、早期退職への応募や自主退職を促す

 最も望ましいのは(1)ですが、それが難しいから困っているというのが会社側の本音です。また、(3)は追い出し部屋の設置やパワハラなどにつながってしまいかねません。よって、会社が取り組む施策として最も現実的なのは(2)です。

 しかし、日本の会社にはまだ年功賃金の名残があります。年功賃金は勤続年数に比例して社員の能力も上がるという考え方を前提に構築された賃金制度で、社員の職務能力に基づいた職能主義で賃金が支払われます。そのため(2)の場合、雇用し続けるほど会社の負担は増えていきます。

 そこで着目されるのが、欧米に古くからある職務主義です。職能ではなく職務に応じて賃金を払う仕組みに切り替えれば、同じ職務を担当する限り賃金を上げる必要はなくなります。一方で、新しい技能を持った若手人材に高い賃金を支払うことも可能になります。今はやりのジョブ型雇用は、職務主義に基づくシステムです。流行の背景には、ここまで解説したような会社側の思惑が透けて見えます。

 しかし、今の日本でジョブ型雇用を機能させることは、ほぼ不可能です。なぜなら、社員が職務遂行能力を満たさないと判明した時点で手詰まりになってしまうからです。手詰まりになる理由は大きく分けて2つあります。

画像はイメージ、出所:ゲッティイメージズ

ジョブ型が日本企業にはまだ早い2つの理由

 一つは、職務遂行能力を満たさない社員を解雇できないことです。だからといって、ジョブ型雇用は職務主義で契約しますから、社員の同意なしに職務を変更させることもできません。もし社員の能力に応じて別の職務に変更させるようなことをしたならば、それは職能主義でジョブ型雇用ではありません。つまり、日本でジョブ型雇用を導入すると、社員が自らポジションを譲らない限り職務を変えられないということです。これは組織の機動力を著しく奪うことになります。

 もう一つの理由は、仮に難易度の低い職務へ就くことに社員が同意したとしても、職務に応じて一方的に賃金を下げてしまえば、不利益変更と見なされてしまうことです。逆に賃金を下げないと、職務と賃金が連動せずジョブ型雇用ではなくなります。

 ジョブ型雇用が機能しづらく、かつ年功賃金を継続せざるを得ないとなると、Bタイプ社員対策の「(2)Bタイプ社員を戦力外と見なしたまま賃金を低く抑え、コストを最小限に留める」では、会社の負担を年々大きくしてしまいます。では、どうすればよいのでしょうか。やはり、原点に帰って「(1)Bタイプ社員が活躍できる職務を見つけてコンバートし、Aタイプ社員への転換を図る」を目指すべきです。難易度が高い施策であることに間違いありませんが、実現できる可能性を高める方法があります。

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