なぜ表示にまつわる問題はなくならないのか? 1つには、表示が宣伝やセールストークの中で行われることにある。
悪名は無名に勝るという言葉があるが、商品やサービスを知ってもらわなければビジネスは始まらない。知ってもらうためには誇張があることは織り込み済みで、度が過ぎなければある程度容認されるという誤解が企業側にはあるのかもしれない。
あるいは多少の表記ミスがあっても、食中毒のような健康被害と比べたら大きな問題ではないという誤認もあるのかもしれない。前回の記事で取り上げたラーメン店は近所のスーパーで表示と異なる海老を堂々と仕入れるなど、隠す素振りすら見られなかった。
しかし科学的に優劣がつかない場合でも、事実と異なる表示を行った結果、消費者が著しく優良と認識してしまう表示は不当表示となる。
過去に、ビタミンCについて景品表示法で不当表示とされたケースがある。
合成されたビタミンCを使用しているにもかかわらず、事実と異なり、アセロラ果実から得られた天然由来ビタミンCを使用していると表示されていた。この場合、天然由来と合成されたもので栄養学的に差異がなかったとしても不当表示とされた。
牛宮城のトラブルでは、宮迫さんが謝罪動画をYouTube上にアップしている。その中で、仕入れ担当者が品質の良いものを仕入れようとした結果、メニューの表示とは異なる牛が含まれていたが、肉質には問題がなかったと弁明している。しかし肉質が問題なければ許されるというものではない。問題は表記と提供された商品が異なっていた点だ。
雌牛か去勢された雄牛か、30カ月以上肥育されたかといった、味で区別のしにくいキャッチコピーを信じる消費者側に問題があるのではないか、という一部からの指摘も筆者は目にした。
しかし、ひとくくりに消費者といってもさまざまな属性があり、焼き肉店は一部の限られた食通だけを相手にしているビジネスではない。表示は購入を判断する客観的な材料となるもので、そこに一切の嘘は許されない。
消費者は表示内容に嘘がないと信じて購入する。多少のウソがあっても問題ないと考える消費者は極めて少ないだろう。また情報に誤りがあった場合、消費者と事業者の認識には大きなズレがある。
繰り返すが、ポイントは「消費者がどのように理解するか」で、事業者の意図とは無関係だ。
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