昇格・降格時の賃金、どう決める? 「モチベーションを高める」「降格ショックを和らげる」方法昇格、降格人事を考える(1/3 ページ)

» 2022年05月10日 07時00分 公開
[杉山秀文ITmedia]

昇格・降格時の賃金の考え方

 今回は昇格・降格と賃金の関係について解説します。

 賃金テーブルには、等級ごとに単一の金額とする「シングルレート」(単一給)と、同じ等級でも幅のある「レンジレート」(範囲給)があります。

 シングルレートであれば、昇格・降格時の賃金は単純に該当等級の金額にすればいいだけなので、シンプルです。一方、レンジレートの場合、昇格・降格時の賃金については次の2つの考え方があります(ここでは、いわゆる「基本給」について取り上げます)。

昇格時

  • 単純横滑り:昇格前の等級で賃金改定(評価昇給など)を行い、その額と同額に位置付ける
  • 昇格昇給上乗せ

photo レンジレートの場合、昇格・降格時の賃金には「単純横滑り」「昇格昇給上乗せ」という2つの考え方がある=図は筆者作成

 降格時は上記の逆になります。

 昇格へのインセンティブが高いのは当然後者です。単純横滑りでも、昇格をすれば将来展望が開けてくるので、やはりモチベーションは上がるでしょう。しかし昇格時点で何もないより、何かしらのインセンティブがあった方がモチベーションは高まります。

 昨今、昇進昇格への忌避感が若手を中心に増えています。その理由の一つが、責任の重さと待遇のアンバランスです。その観点からも、一定の昇格昇給は必要と思われます。

 ここまでは基本給部分について解説をしてきましたが、諸手当を活用する方法もあります。

 例えば、基本給はレンジレート(範囲給)、昇格時は単純横滑りとします。一方、等級対応の手当(「等級手当」とします)は、等級ごとのシングルレート(単一給)にします。こうすると、昇格時に等級手当が上がります。この部分が「昇格昇給」となります。

photo 等級手当には、等級ごとのシングルレートを適用する方法もある=図は筆者作成

 レンジレートの設計は案外複雑です。

 等級ごとに、金額の上限・下限を設定しますが(青天井方式もありますが、採るべきではないと考えます)、つくり方によっては、昇格した途端に上限額近くになってしまうこともあります。それを解消するために上限額を伸ばしていくと、今度は上位等級との重なりが大きくなってしまいます。

 手当を活用することで、そのような問題を回避するのも、一考の価値ありと思われます。

賃金テーブルにはどんなかたちがあるか

 賃金表は「賃金の幅の取り方」で分類できます。

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