トップインタビュー

「高級食パンブーム終了はむしろ歓迎」 乃が美が、強気に“世界一”を目指す理由今夏には「幻の食パン」も(3/5 ページ)

» 2022年05月13日 05時00分 公開
[田中圭太郎ITmedia]

高級食パンブームの陰りは「チャンス」

 乃が美は高級食パンブームの火付け役として業界を牽引(けんいん)してきた。一時期は各店舗に大行列ができるなど大きな話題となった。小林取締役は、当時の売り上げは「異常値だった」と振り返る。

 「19年頃はメディアに取り上げていただく機会が多く、大きなブームになっていました。今にして思うと、パン屋の1店舗あたりの売り上げとしては多すぎるといいますか、異常値だったと思います。当然ながら、その状態が長く続くとは思っていませんでした。今は当時に比べれば1店舗あたりの平均売上額は小さくなっていますが、むしろ普通の状態に戻ったと思います」

 ブームが盛り上がった当時には、参入する業者も増えて高級食パンを販売する店舗が乱立。最近は他店で閉店も目立つようになった。それでも小林取締役は「ブームが終わったことはむしろチャンス」と言い切る。

 「当社は創業時より食文化を創造し、おいしい食パンを届けたい思いでやってきましたので、ブームを仕掛けたつもりはありません。結果的にブームが起きたことは、高級食パンを知っていただく意味では良かった面もあります。

 その一方で懸念したのは、ブームが起きたことで、食への思い入れのない事業者が参入することです。価格だけ高級なパンを召し上がった方が、高級食パンそのものにネガティブなイメージを持つことを恐れていました。

 今、ブームが終わったとメディアの皆さんに言われることは、当社にとってはむしろ良かったと思っています。ブームが終わったからと言って、消えていくつもりはありません。逆に、高級食パンを食文化として残していくチャンスだと捉えました。原点回帰して復刻のパンを発売するのも、初めて商品発表会を開催したのもその思いからです」

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.