マーケティング・シンカ論

「1日1500万人」の来客を生かす ファミマが“広告メディア”になる日効果測定には「AIカメラ」(2/3 ページ)

» 2022年05月13日 11時30分 公開
[吉村哲樹ITmedia]

AIカメラ搭載でデジタルサイネージの広告効果の測定を図る

 「ファミリーマートビジョン」と名付けられたこのデジタルサイネージには、ゲート・ワンおよびそのパートナー企業が制作した独自コンテンツの動画と、クライアント企業が出稿した広告動画が配信される。

 独自コンテンツの内容としては、スポーツや音楽、お笑いなど、10〜30代の若年層をターゲットにしたものが多いが、旅や動物など高齢層にも親しみやすいテーマのコンテンツも配信している。これらコンテンツの魅力を高めていくことで店舗の顧客体験を向上させるとともに、広告メディアとしての価値向上も図っている。

photo 左からゲート・ワン社長室長の松岡豪氏、取締役COOの速水大剛氏

 広告の営業や効果測定などはデータ・ワンが一手に担い、同社からゲート・ワンに対してファミリーマートビジョンに配信する広告動画コンテンツが出稿される。なおデータ・ワンはファミリーマートビジョン以外にも、YouTubeやFacebook、Twitterなどさまざまなデジタル媒体に対してターゲティング広告を配信しており、デジタルサイネージと各種デジタル媒体を適切に使い分けることで広告効果の最大化を図っている。

 速水氏によれば、従来のターゲティング広告とファミリーマートビジョンとでは、広告媒体としての特徴や性格が明らかに異なるという。

 「デジタルサイネージは街角や店頭で不特定多数の目に触れるものなので、ターゲティング広告のように受け手を絞り込んでいくやり方とは根本的な仕組みが異なります。

 現在デジタル広告の世界ではサードパーティーCookieの廃止や改正個人情報保護法の施行に伴い『従来のターゲティング手法が通用しなくなるのではないか?』との懸念も持ち上がっていますが、ファミリーマートビジョンに関していえばこうした動向の影響を直接受けることはないと考えています」

 一方、デジタル広告とは異なり「効果をなかなか正確に測定できない」ことがデジタルサイネージの弱点の一つだともいわれてきた。そこでファミリーマートビジョンでは、デジタルサイネージにAIカメラを取り付け、視認した人の数や属性(性別、年齢など)、視認秒数などを自動認識できるようになっている。

 このAIカメラの仕組みはまだ検証段階ながら、既に現時点でも高い精度を示しており、「これまで困難だといわれてきたデジタルサイネージの効果測定を可能にすることで、その価値をさらに高めてくれるツールになり得るのではないか」(速水氏)と大いに期待しているという。

POSデータとの連動で広告効果を正確に評価することが可能に

 現在さまざまな企業がファミリーマートビジョンに広告動画を出稿しているが、ファミリーマートの店頭で売られている商品のメーカーはもちろんのこと、それ以外の企業からも例えば親子連れの客層を狙ったサービス業やアニメ番組の広告など、ファミリーマート店舗ならではの幅広い顧客層への訴求を狙った出稿が多いという。

 現状では全ての出稿について明確な効果が確認できているわけではないが、例えばとある企業では広告認知率に関する消費者調査を独自に行ったところ、ファミリーマートビジョン経由での認知率が突出して高いという結果が得られたため、その後も継続的に出稿を続けているという。

 また、ファミリーマートビジョン独自の効果測定も実施している。ファミリーマート店舗での出口調査を行ったり、ファミリーマートのスマホアプリ「ファミペイ」を通じて顧客の声を集める取り組みも始めている。

 「ファミペイのアプリにはアンケート調査の機能があるので、これを使ってファミリーマートビジョンで流れているコンテンツに対する来店客の評価を集めたいと考えています。ファミペイのユーザーはファミリーマートのヘビーユーザーですから、質のいいフィードバックが得られるのではないかと考えています」(速水氏)

 こうした評価結果を反映させながらクリエイティブの質をブラッシュアップしていくためには、PDCAサイクルをできるだけ早く回していく必要があるが、その点「ファミペイのようなデジタルチャネルを通じたフィードバックの仕組みがある点は大きな強みだ」と速水氏は述べる。

 さらには、データ・ワンが収集するPOSデータと広告データを突き合わせることで、「広告がファミリーマート店頭での購買につながったどうか」を検証できる。従来はオンラインの広告がオフラインの購買行動に及ぼす影響を正確に検証するのは容易ではなかったが、これを可能にするのがデータ・ワンが手掛ける広告モデルの最大の強みだと語る。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.