1980年代に入って、クルマはコストダウンのために鋼板の使用量を減らすべく薄肉化されていった。その結果、剛性や強度を高めるためにプレス技術が発達し、ボディの造形も豊かに複雑になっていった。
ルーフパネルとボディをつないでいるピラーだけが、モノコックボディの構造的要所ではない。滑らかに見えるスタイリングのその裏側は、補強のための構造材が張り巡らされている。
フロアパネルは床となって足元やシートを支えるだけでなく、シャシー全体の剛性を確保する上でも重要な役割を持っている。そのため平坦な鋼板ではなく凹凸が付けられているほか、フレームの名残のように骨組みが組まれている。
それがメンバーと呼ばれる構造材だ。メンバーは板1枚ではなく四角い閉じた断面構造になっていて、フロアパネルにパイプを一体化したような形状になっている。閉じた構造は平板やコの字状よりも強く、曲げやねじりに対して強固なボディとすることができるのだ。
フロアにはエンジンルームから前後方向に延びるサイドメンバー(自動車メーカーによって呼び名が異なり、車種によって位置も変わる)のほか、ボディの左右を結ぶように延びるクロスメンバーがいくつか組み込まれている。
トヨタのBEV、bZ4Xのボディ。骨格がよく分かる画像だ。フロアパネルの下にバッテリーが収まる。トヨタはスバルと共同開発したこのクルマにもEV専用のプラットフォームを開発してクルマの基本性能を高めることに成功している。
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