実際にはメンバーもフロアパネルと一体に成形されて、フロアを何分割かにしてスポット溶接でつなぎ合わされている仕様もあり、完全に一体化された鋼管のような剛性は得られていないクルマもある。
これはコストや生産性を重視した日本車ならではの構造だ。鋼板を二重どころか三重に重ねることで剛性を得る(それでも結合はスポット溶接だけ!)ようなクルマもあり、重量や材料の無駄を考えるとベストとはいえない作りだった。
ドイツ車では、80年代後半からボディ剛性は非常に重視されており、2000年以前からサイドメンバーの重要性と、それを生かすためのフロアやボディの構造に工夫が凝らされていた。それに比べると日本は10年は遅れているという印象があった。
しかし衝突安全性と走りの質感、そして燃費性能のための軽量化のためにクルマの基本性能を引き上げるべくシャシーのプラットフォーム化を進め、この10年ほどで見違えるほど日本車のボディ構造のクオリティは向上した感がある。
年々、衝突安全性や燃費、そして走りのフィールも高まっているのは、基本となるボディ骨格の洗練ぶりが何よりも大きく影響している。
こうして培った日本のクルマにおけるモノづくり技術は、これからの10年後20年後にも、強みを発揮していってくれるはずだ。なぜならこの先、クルマがEVになってもFCVでも、ボディの作り込みは同じように求められるからである。
専門用語を駆使しなければ、複雑すぎて伝え切れない。クルマのボディに込められたさまざまな工夫の片鱗をお伝えできただろうか。
芝浦工業大学機械工学部卒。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。これまで自動車雑誌数誌でメインライターを務め、テスターとして公道やサーキットでの試乗、レース参戦を経験。現在は日経Automotive、モーターファンイラストレーテッド、クラシックミニマガジンなど自動車雑誌のほか、Web媒体ではベストカーWeb、日経X TECH、ITmediaビジネスオンライン、ビジネス+IT、MONOist、Responseなどに寄稿中。近著に「ロードバイクの素材と構造の進化(グランプリ出版刊)、「エコカー技術の最前線」(SBクリエイティブ社刊)、「メカニズム基礎講座パワートレーン編」(日経BP社刊)などがある。企業向けやシニア向けのドライバー研修事業を行う「ショーファーデプト」でチーフインストラクターも務める。
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