クルマのボディは大きく分けて、エンジンや変速機などのパワートレーンを収めるためのスペースと居住空間、そして土台となるシャシーで構成されている。
エンジンが収まっているところはエンジンルームと呼ばれるが、開発の現場ではエンコパ(エンジンコンパートメント=エンジンのための区画)と呼ぶことが多い。これは、エンジンが収まることを想定したスペースだからだが、実はエンジンを収めているだけでなく、その他にもさまざまな役割がある。最も重要なのは前面衝突の衝撃から乗員を守るクラッシャブルゾーンとしての役目だ。
交通事故ではかなりの割合を占める前面衝突において、乗員を保護するのはエアバッグやシートベルトだけでなく、潰れることで衝撃を吸収してくれる部分が重要なのである。
そのためフロントウインドウを両脇で支えるAピラー(フロントピラーとも呼ばれる)には、キャビンの変形を防ぐために強固な構造材が使われる。前方視界確保のためには細くなくてはならず、それでいて強くなければいけないという、相反する条件をクリアしなければいけないものなのだ。
そして車体中央からルーフパネルを支えるBピラー(センターピラーとも呼ばれる)は、車体全体の剛性を高めるだけでなく、側面衝突時には衝撃を受け止め、乗員を守る役割がある。
ルーフの後端を支えるのがCピラー(リアクォーターピラーとも呼ばれる)だ。特に後方のピラーはスタイリング上も太くして力強い印象やスタイリッシュな雰囲気を醸し出すために使われることも多い。それと同時に、こうした処理は後席乗員の安全性向上にもつながる。
ワゴンやミニバンなどルーフをボディ後端まで延ばした場合には、リアエンドにさらにDピラーが追加される。
クルマのボディは基本的にモノコック構造となっており、フレーム(骨格)を持たず、外殻で構造を支えるものだ。生産性が高くコストは安く、軽量で強度や剛性を高めやすいのが特長だ。こうしたピラーによってクルマは、モノコックとしてルーフパネルを構造材として利用することができるのだ。
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