クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

Aピラー、Bピラー、クロスメンバー? クルマのボディ骨格に使われる構造の意味高根英幸 「クルマのミライ」(2/4 ページ)

» 2022年05月19日 07時00分 公開
[高根英幸ITmedia]

クルマのボディ各部に与えられたそれぞれの役割

 クルマのボディは大きく分けて、エンジンや変速機などのパワートレーンを収めるためのスペースと居住空間、そして土台となるシャシーで構成されている。

 エンジンが収まっているところはエンジンルームと呼ばれるが、開発の現場ではエンコパ(エンジンコンパートメント=エンジンのための区画)と呼ぶことが多い。これは、エンジンが収まることを想定したスペースだからだが、実はエンジンを収めているだけでなく、その他にもさまざまな役割がある。最も重要なのは前面衝突の衝撃から乗員を守るクラッシャブルゾーンとしての役目だ。

 交通事故ではかなりの割合を占める前面衝突において、乗員を保護するのはエアバッグやシートベルトだけでなく、潰れることで衝撃を吸収してくれる部分が重要なのである。

トヨタ・アクアのボディ骨格を解説するトヨタの資料。各ピラーの役割や、ロの字断面や環状構造による閉構造、各部に補強のための部材や、構造用接着剤を用いて高剛性を実現していることがよく分かる

 そのためフロントウインドウを両脇で支えるAピラー(フロントピラーとも呼ばれる)には、キャビンの変形を防ぐために強固な構造材が使われる。前方視界確保のためには細くなくてはならず、それでいて強くなければいけないという、相反する条件をクリアしなければいけないものなのだ。

 そして車体中央からルーフパネルを支えるBピラー(センターピラーとも呼ばれる)は、車体全体の剛性を高めるだけでなく、側面衝突時には衝撃を受け止め、乗員を守る役割がある。

 ルーフの後端を支えるのがCピラー(リアクォーターピラーとも呼ばれる)だ。特に後方のピラーはスタイリング上も太くして力強い印象やスタイリッシュな雰囲気を醸し出すために使われることも多い。それと同時に、こうした処理は後席乗員の安全性向上にもつながる。

 ワゴンやミニバンなどルーフをボディ後端まで延ばした場合には、リアエンドにさらにDピラーが追加される。

 クルマのボディは基本的にモノコック構造となっており、フレーム(骨格)を持たず、外殻で構造を支えるものだ。生産性が高くコストは安く、軽量で強度や剛性を高めやすいのが特長だ。こうしたピラーによってクルマは、モノコックとしてルーフパネルを構造材として利用することができるのだ。

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