ところでマーティン氏はデモを行う際、RAYを棚の中に収めていた。
サウンドバーの上下左右、そして奥にも背板がある棚にだ。スピーカー製品のデモとしては異例である。スピーカーから放出される音は、少なからず回折現象を起こしてスピーカーの後ろ側に回り込む。このため、スピーカーの周りに壁などがあると音が反射し、場合によっては共鳴することで音質が悪化する。
つまり、RAYを棚の中に置いてデモするということは、「そういう置き方をしても音質は悪化しないよ」というメッセージなのだと受け取って、その理由を尋ねてみた。
「もちろん棚の中に入れない方がいい。入れる場合も、棚の前面の縁ギリギリに置くことが望ましいが、ユーザーはスピーカーを目立たない場所におきたいものです。棚の中に収めたいと思うユーザーの気持ちを考えるなら、『理想的ではないから入れるな』ではなく『入れたとしても可能な限り良い音になるよう作ろう』と努力すべきです」とマーティン氏は話す。
このような考えは(残念ながらマイク品質が把握できるiPhoneのみの対応だが)スマートフォンのマイクを使って部屋の音響特性を計測し、主に低域の質に影響を与える設置環境による音質変化を補正するTrueplayという機能にも反映されている。
なおSonos MoveやRoamといった可搬性のあるスピーカーにおいては、内蔵マイクを用いて自動的にTrueplayが働くようになっている。動かした先でも、ひと知れず音が調整されるというわけだ。
さて、マーティン氏との話で自分自身がソノスの製品に感じていたことをあらためて確認でき、すっかり意気投合して音楽とオーディオの話で盛り上がったのだが、それに先立って(とっくの昔に)我が家には至る所にソノスのスピーカーが置かれるようになっている。
メインのリスニングルーム兼シアターにこそハイエンドのオーディオシステムが配置されているが、それ以外の部屋にはSonos ONEが置かれ、Roamに至っては2台体制。何かの作業が必要な時は、Roamを持って手元で音楽を鳴らしながら作業をするし、朝起きたらまずは枕元にあるRoamの再生ボタンを押す。そうすることで、家の中にあるソノスのシステムが一斉に音楽を奏で始めるようにしてあるからだ。
書斎ではお気に入りの伝統的な小型ブックシェルフを高音質USB DACと真空管アンプで鳴らしていたが、ここも今や2台のSonos FiveとSonos Sub(Gen3)置き換えてしまった。
「厳密な意味で音質を追求するなら、書斎は以前のシステムの方が良かったのでは?」という友人もいたが、“生活の中に音楽を取り入れること”以外にエネルギーを使うことが億劫(おっくう)になってしまった。
メインのシステムは注意深くインストールし、調整もしている。しかしが、それ以外の生活空間ではリラックスして、ただ音楽を感じることだけに集中したい。そのための最短距離がソノスのシステムだった。
ところが、筆者のように感じた人たちが低空飛行を続けていたソノスの業績を、大きく飛躍させたというのだから面白い。飛躍のきっかけは”ユーザー目線”を徹底し、ユーザー中心主義とも言える姿勢を徹底したことだった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング