2020年11月の発売以降、世界的な人気から品不足に陥っている、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)の家庭用ゲーム機「PlayStation 5」(PS5)。ソニーグループが、サプライチェーンの制約が緩和されたとして、PS5を大幅に増産する方針を発表しました。それにより、PS5の関連ワードが複数、Twitterのトレンド入りを果たしました。
関心の高さの背景にあるのは、PS5もターゲットになり、ここ数年、社会問題化している「悪質転売」でしょう。今や人気商品は、ファンではない、転売目的の「転売ヤー」が目を付けて買い、発売直後に「売り切れ」や「品薄」に。同時にフリマアプリやネットオークションなどで、希望小売価格よりも高い価格で売られるのは当たり前になっています。
自身が買ったものを他者に売り渡す「転売」ですが、その行為そのものは、違法でありません。しかし「価格のつり上げ」にもあるように、モラルが問われています。
生産を終えた商品ならまだしも、企業が生産中の商品で、大規模な転売が横行すると、需要と供給のバランスが大きく狂います。社会問題になっている悪質転売は人気商品の特性を利用し、供給を意図的に絞ることで、価格を吊り上げ、ファンや企業を犠牲にしながら、利益を得ているという構図になります。
そして難しいのは、悪質転売に対する消費者の“怒り”が、商品を出す企業に向きがちなことです。そこには、転売ヤーに対して、消費者は“不買”以外は何もできません。このため「企業が対策をしろ」という声はSNSでもよく見かけます。
消費者は、物流にも業界にも詳しくないので、物事を表層的に判断する一面があり、その声が大きくなれば“正論”になります。しかし企業に「転売対策」を求めること自体が、難しい要求です。
なぜなら「独占禁止法」(独禁法)が立ちはだかるからです。価格や仕入れで圧力をかけたりすると、自由競争を阻害する「価格拘束」とみなされ、企業側が罰せられる可能性が高いのですが、「そんなの関係ねえ」となりがちではあります。
こうしたことから、企業にできることは限られており、増産は1つの方法ですが、リスクでもあります。転売ヤーが手を引くと供給過剰になり、価格下落になる可能性をはらんでいるからです。
個々の転売ヤーの規制も難しく、企業も手を出せないとなると「お手上げ」なのが現状と言えます。
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